映画も音楽もCMも、現場が生き生きしていないとダメ!(ゲスト:浅野忠信さん)

20代の終わりに限界を感じて、シフトチェンジした

権八:僕も洋基くんも浅野さんと初対面なんですけど、ちょっと意外ですが、気さくでいらっしゃって。ちょっとイメージと違う(笑)。

浅野:僕は小さいときから「口から生まれたのか」とよく言われるぐらいずっとしゃべっている子だったんです。

中村:日本の視聴者のほとんどはそう思ってないですよね(笑)。

浅野:そうなんですよね。地元の友達はそっちのアホな面を知っているんですよ。ずっとギャーギャーしゃべっていると。でも、いつの間にか浅野忠信というパブリックイメージが寡黙でクールで、という風になってしまって・・・どうしようと思って。

一同:

権八:ここ何年か、変わったメイクをしている写真とか、ツイッターやインスタグラムで発信されていますよね?

浅野:ツイッターやインスタは友達と遊んでるぐらいの感じじゃないですか。それで調子に乗ってやっていたらワイドショーに出ていて。

中村:浅野さんはツイッター13万人以上のフォロワーがいますからね。

浅野:あ、出ちゃったんだと思って。まぁ、いいかと。暗いニュースを流すよりは俺のアホなニュースで一瞬でもみんなの気分を紛らわせようみたいな(笑)。

権八:今日、うちの家族に「浅野さんと会うんだ」と言ったら、「あの人、本当は面白い人らしいね」って(笑)。ちょいちょい、そういうイメージが浸透していますよね。

浅野:クールで寡黙みたいな役をいただいたときもありましたけど、一歩脇に逸れると赤塚不二夫さんだったり(編集部注:『これでいいのだ!!映画★赤塚不二夫』に浅野さんは主役の赤塚不二夫役で出演)、とんでもない役もやらされるわけです。全裸で現場にいさせられたりするわけで、これは若手お笑い芸人がやっていることと変わらないんじゃないかと。

一同:

浅野:そのときに、このままかっこつけてクール路線でいっちゃうと俳優の役も縮まっちゃうなと思って。どうせ全裸でお尻の穴も見せなければいけないような仕事なら今から開き直っていかないと役者の仕事を楽しめないなと思いました。そこから楽になりましたね。

澤本:役者として転換点があったということをおっしゃっていましたが、それはそういうことですか?

浅野:20代の終わりに自分のやり方に限界を感じたんですね。飽きてしまったというか。自然な演技と言われることが多かったんですけど、それに対する疑問が自分の中で生まれてしまって。こんなカッコつけていたら何も得られないと。このままでは小さなことしか得られない、もっと全部を出さないと掴めないと思ったんです。

権八:それは赤塚不二夫の時ですか?

浅野:それもですし、山田洋次監督の『母べえ』も、ちょっとおっちょこちょいな面があるような役で。自分の中にないもの、やりたくないもの、やったことのないものをするときって、とても苦しい。けれど、その時にストレッチされるというか。終わった時に、あ、なるほど大変だったけど、こういうものを僕は受け取っていたんだなと気づくことがあります。自分の好きにやっていると、そういうことはあまりないですね。

澤本:なるほど。自分の範囲の中だと守られるけど、受け取るものもないと。

浅野:そうですね。自然だ、クールだ、という役が来たときに、そこにもう一歩、ちょっとオッチョコチョイな面を入れることで余計にクールな面が立つというか、愛情豊かな人に変わってくるというか。それを知ったときに、なるほどと思いました。簡単なことですが、やってみないとわからなかったですね。

澤本:それが20代の後半くらい?

浅野:かな。30代も10年たっぷりかけて自分では勉強したつもりでしたね。

次ページ 「「ナチュラルな演技」の原点はオーディションにあった!?」へ続く

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