第4話の見所・危機管理担当役員の判断
重大な隠ぺい事実が発覚し、判断を求める西行寺に対して、サンライズ物産専務の白川(小日向文世)は、徹底的な調査の続行を指示する。「誰であろうと不正はいけない。企業の経営者たる人間は常に清廉潔白であるべきだ」と答えている。また、西行寺が白川に「あなた自身も火の粉を被る可能性はありますよ」と尋ねると白川は「責任を取る覚悟ぐらいありますよ」と間髪入れずに言い放った。
このような状況の場合、残念なことに、会社の将来、従業員やその家族の行く末など、多くのことが走馬灯のように危機管理担当役員の頭をよぎり、判断を躊躇するか決定を留保してしまうことも少なくない。
その結果、危機的事態はさらに収束不可能な危機の連鎖に発展し、コントロールできない状況に至ってしまう。ここでの白川の判断は危機管理業務を完遂するために通らざるを得ない最も重大な判断であることを読者にも伝えておきたい。誰が負の連鎖を止める決断をするかが重要なポイントだ。
ストーリーは、塚原による事実の隠ぺいの連鎖を描く。ある事実を隠すためにさらに嘘をつく、隠す。大きな嘘にはそれを超える嘘が必要となる。知らないうちに人は、嘘が本当のことであると錯覚し、自分が悪い行いをしていることさえ忘れる。そのような怖さを描いている。
最後のシーンで、西行寺が塚原に向かって「真実をねじまげるのがあなたの危機対策ですか」と詰め寄る場面がある。塚原が守りたかったのは結局自分自身の立場だった。追いつめられた塚原が口に出した言葉は謝罪ではなく、「会社の為だ。あの事故が知れたら波丘樹脂の信頼は失墜する」と。悪行を重ねる人物の特性は、最後まで自身の行動の正当性を主張することが一般的だが、まさに塚原もそうした人物のひとりだった。
最後に西行寺が冷徹に塚原に対して「あなたの危機対策は見せかけにすぎません。その場をやり過ごすだけでは、企業の危機は何も解決しない」と語るシーンは、企業の危機管理を担当する筆者にとっても印象深い。
監査役機能の強化が期待されている
現在、監査役の機能は強化され、再発防止策などにおける運用に関するプロセス監査が実施されている。監査役は、内部統制システムの取締役会決議(財務報告に係る内部統制を含む)の内容の相当性や取締役の職務の執行について、問題があれば指摘し改善を要求する義務を負うため、これを怠れば監査役としての責任を追求されることになる。
また、監査役は、不祥事発覚後の再発防止策の運用面での実施状況や有効性評価、法令の遵守並びに企業倫理の強化・徹底についても検証結果を表明する役割を担い、その機能の強化に期待が集まっている。逆に監査役まで巻き込んだ不正行為は発見されにくく、今後ますます監査役業務の透明性が重要視されている。
監査役を主人公にしたドラマがあっても面白いのではないか。