個々の経験をフィードバックして全体をレベルアップする
山口:僕は他のデザイン事務所にも所属しつつTYMOTEに関わっているので、比較的客観的にメンバーに意見することが多いです。いま活動7年目に入りましたけど、最近はそれぞれ自分のやりたいことも見えてきて、TYMOTEで活動しながらも、自分でアパレルブランドを立ち上げる人がいたり、別のクリエイティブチームを立ち上げたりとメンバーは活動の幅を広げています。
村井:全部無理にTYMOTEでやることはない、でもTYMOTEらしさも突き詰めていこうという感じで。チームワークから生まれる表現や、柔らかい気の利いた表現はもっと追求していきたいですね。
森田:それぞれが自分の分野でレベルアップして、TYMOTEにフィードバックさせている感じです。
藤田:皆が感度のいいアンテナを持っていて、共有できているのがいいですね。最近はどんな仕事が増えているんですか?
森田:海外からの仕事も増えていて、最新はシドニーのオペラハウスへのプロジェクションマッピングの仕事をしました。海外の場合Vimeoからコメントやメッセージが来て、そこから仕事につながったりもしています。
山口:Vimeoで一番盛り上がったのは、クラムボン「Rough&Laugh」のリミックスのMVですね。
えぐち:面白い。こういうものを見た世界の人たちからオファーが来るんですね。
森田:JINSのアイウェア「JINS MEME」をデベロッパー向けにイントロダクションするムービーも最近の仕事です。
えぐち:ビジュアルだけで、分かりやすく、面白く伝えるのが得意ですね。
森田:ムービーで、言葉の説明に頼りすぎるのが嫌なんです。できるだけ情報を削り、直感的に分かるよう心掛けています。
藤田:次に手掛けていきたい領域はありますか?
村井:僕の場合は実写映像です。今年公開した成田空港「ターミナル3」のインタビュー動画では、監督と音楽と編集に挑戦しました。いつもやったことのないことに挑戦していますが、TYMOTEが良いのは、不安を感じたらすぐメンバーに確認できることですね。
森田:映像を作る際にも、すぐ音の相談ができる。いい空間だと思います。
村井:いい意味で学校みたいな場所で、分からないところはみんなで教え合えます。
森田:僕はイッセイミヤケのような、チームで取り組める仕事を増やしていきたい。皆でやれる楽しさ、皆で考えるからこその爆発力を感じましたし、その上で評価もしてもらえた、手応えのあった仕事でした。
村井:僕らは運がいいんです。食えない時もあったけど、先輩や仲間が面倒を見てくれた。おまえら面白そうだからチャレンジしてみろよと仕事をくれて、それで実績ができていった。学生から仕事を始めているので、最初は仕事の取り方も、自分たちに何ができるかも、どう世の中にアウトプットされるのかも分からなかったですから。
森田:だから、毎回オーバークオリティーを目指して…を繰り返してきたんですよね。
えぐち:頼む側も、そうやって持ってきてくれたらうれしいですよね。今日はありがとうございました。
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TYMOTE
2008年に設立された、東京拠点のデザイン・スタジオ。井口皓太、飯高健人、石井伶、森田仁志(写真中)、村井智(写真右)、山口崇洋(やんツー)(写真左)、浅葉球、加藤晃央、松岡勇気の9名で構成され、グラフィックを軸に、映像、CG、音楽、メディア・アートなど、メンバー各自が異なる分野でクリエイティブを追求する。メンバーの多様な視点からプロジェクトを一度分解し再構築することで、高い水準の作品やアイデア、企画を多数生み出している。
えぐちりか
アートディレクター/アーティスト。
電通CDCでアートディレクターとして働く傍ら、アーティストとして国内外で作品を発表。2014年絵本「パンのおうさま」が小学館から発売。2011~12年フィギュアスケート髙橋大輔選手の衣装を担当するなど、広告、アート、プロダクト、衣装デザインなど様々な分野で活動。最近の仕事に、新グローバルブランド「KOE」のビジュアルブランディング、ベネッセこどもちゃれんじベビー教材玩具デザイン、ソフトバンクPANTONE6 CMグラフィックおよび携帯端末ディレクションなど。