社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学ぶ連載です。
ビューティーエクスペリエンス
パーマで傷んだ髪を美しく健康にしたいと、初代社長の福井耀氏がサロン向け製品メーカーのモルトベーネを創業。1980年代後半、一般向け製品へも進出。2001年には福井敏浩社長へと代替わりし、現在は海外へも積極的に展開。40周年の節目に社名とロゴを変更した。
1975年に「髪。より美しくより健やかに」を経営理念に、美容室向けヘアケア製品からスタートしたモルトベーネは創業40周年を迎えた今年、ビューティーエクスペリエンスと社名を新たに再スタート。ロゴやミッションステートメントも一新されました。
クリエイティブディレクターに佐藤可士和氏を迎え、2013年からスタートした40周年プロジェクトについて、広報室の花岡大樹室長、今井さちさん、坂口奈那さんにお話を伺いました。
社名、ロゴ、ステートメントを刷新
社内外へ徹底したブランディング
変化に対応すべく社名を変更
今回のプロジェクトは、社名変更ありきではなく、創業40周年を機に新たなCIを佐藤可士和氏に依頼したところからスタートしました。
佐藤氏と福井敏浩社長が話し合う中で、社名変更の案が挙がったそうです。会社としての40周年の節目に加え、福井氏が同社を引き継がれて15年目だったことも背中を押し、社名変更を決意されました。
会社が成長を続けるためには、環境変化への対応が欠かせません。しかし一方で、変わるということには、それまで積み重ねてきた何かを失うリスクもあります。
福井社長もこの葛藤の中で、何回も議論や思考を重ね、「美しさを追求する」という自社の原点に立ち返った結果、今回の社名が誕生しました。
周年の節目は「未来」に向けて「過去」に立ち返る機会、「変革」のために「継承」すべきことを見つける機会。同社の40周年は、まさに周年の節目の本質を捉えたコーポレートブランディング、会社の変革活動に取り組まれた事例といえます。
社内外のブランディングを接続
6月3日に行われた、顧客・取引先・メディア向けの周年記念イベントでは新社名・ロゴ・ミッションステートメントのお披露目はもちろん、社員自らイベントの場で新発売となる製品を来場者にプレゼンテーションされていました。
周年のタイミングに合わせてこれだけの変更を同時に行うことは、社内も大変だったと思いますが、逆に周年という会社事に対して社員が関わることで一体感が生まれ、会社に対するロイヤリティ向上効果も期待できます。
製品を体験できるイベントの実施にはコストがかかりますが、目に見える演出を通じてメッセージを伝えることが可能です。
実際に、普段はグループ会社としか取引のないパートナー会社からも「参加してよかった。何か面白いことをやってくれるのでは、と期待できた」などの声があり、体験型イベントならではの効果もあったようです。
また、社内への社名変更の告知にもイベントを活用されています。半年前の昨年12月に実施した、毎年恒例の経営方針発表会に佐藤可士和氏をゲストとして招き、社名変更をサプライズで発表。そこにいたるまでのストーリーをビジュアルも交えて社員に見せることで、「この会社は変わるんだ」という強烈な印象とともに、バックストーリーが伝わる工夫を施しています。
さらにイベントだけではなく、社内報でも今回の社名やロゴ変更の経緯を詳細に伝えていったり、月1回の朝礼をミッションステートメントの読み上げの場として活用したりと、随所にインナーブランディングの強化につながる取り組みをなされていることが特徴的かつ効果的だと感じます。