今年のカンヌを徹底分析!木村健太郎×古川裕也×レイ・イナモト座談会

新設「グラスライオン」をどう見るか?
広告界にもダイバーシティの波

木村:昨年チタニウムの審査員をしたとき、“人類共通の5大イシュー”として、ジェンダーや偏見、戦争や犯罪、病気や身体障害、貧困や格差、環境が挙げられていました。そのときも、「この問題にいかに立ち向かったかを示してクリエイティブの力を見せようぜ!」というソーシャルグッドの結果重視派と、「いやいや産業自体を前進させるゲームチェンジャーなアイデアを選ぶべきだ」というアイデアの先進性派で議論が分かれたんです。

古川:ソーシャルグッドについて思うのは、そこを意識するあまり、自社の能力をはるかに超えた問題や、あるいは自社と関係ない問題まで手を伸ばすべきではないということです。「Life Paint」のように、自社ブランドと密接な問題に取り組むことが大前提で、無理に社会問題に結びつけるのは、要するに賞のためだと思いますが、態度としてひどくプア(貧しい)です。しかもスキャムの新たな温床になっています。残念ながらそれは広告業界の幼稚さを物語っていると思います。

レイ:今年はソーシャルグッドを意識したものがあまりに多かったですね。広告ビジネスの根本からズレていっているのが気がかりです。

木村:そう考えると、「#LikeAGirl」は別格で、きちんとP&Gのブランドに落とし込まれていますよね。思春期をテーマに据えながら、女性への偏見に気づかせ誇りを取り戻そうと呼びかけることで、生理用品という商品が解決すべき問題と、社会が解決すべき問題の両方を同時に扱っています。あの広告には、1冊の本を読むくらいの哲学が込められていると思います。

古川:「#LikeAGirl」は、エクゼキューションは流行りの実験ものだけど、コアアイデアが、「Thanks, Mom」など最近のP&Gが得意にしている“女性をエンカレッジする”ですよね。プロダクトが日用品なので、こういうフィロソフィーを持つことが、効果的なブランディングになっています。

(全文は『ブレーン』9月号にてご覧いただけます)


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木村健太郎(きむら・けんたろう)
博報堂ケトル 代表取締役共同CEO

クリエイティブディレクター・アカウントプランナー。1992年博報堂入社、2006年博報堂ケトル設立。国内外で広告賞受賞多数。2014年カンヌライオンズ チタニウム&インテグレーテッド部門審査員。

 

古川裕也(ふるかわ・ゆうや)
電通 CDC CDCセンター長

エグゼクティブクリエイティブディレクター。1980年電通入社。国内外で広告賞受賞多数。2013年カンヌライオンズ チタニウム&インテグレーテッド部門、2014年フィルム部門審査員。NYフェスティバル2015上級審査員。

 

レイ・イナモト(れい・いなもと)
AKQA ワールドワイドCCO。NY在住。2004年AKQA入社。広告賞受賞多数。2010年カンヌライオンズ チタニウム&インテグレーテッド部門審査員。2015年アドフェスト総合審査委員長、D&AD モバイルマーケティング部門審査委員長。

 

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