秋山さん、コピーはどうすれば上達しますか?(ゲスト:秋山晶さん)【前編】

コピーから人格がなくなり、信号になってきている

中村:今回のテーマを申し遅れました。「コピーで考える、これまでの広告とこれからの広告」ということで、秋山さんにお話をうかがいたいと思います。今は誰もがツイッターで言葉をつぶやくようになりましたが、そんな時代における「コピーの価値」とは何だろうかというところまで深掘りできたらと思っております。秋山さんが若手のときと現在とを比べると、コピーは変わりましたか?

秋山:僕の若いときはコピーが独立していましたね。コピーは文章、あるいは文字として独立していました。今はそういうことではなくて、全部ミックスされて広告になっている。

澤本:全体を通じて。

秋山:全体を通じてコミュニケーションというものになっている。それはずいぶん違うと思います。現在、コピーはコミュニケーションの素材になっているんじゃないですか。

権八:ここにある『D.J.SHOW 秋山晶の仕事と周辺』という本は2000年に出たものですが、僕は新入社員のころに買って読ませていただきました。久々に読んだのですが、今見てもすごくかっこいいですね。1999年春のキユーピーマヨネーズ、ホイップマヨネーズのコピーに「マヨネーズ 空気入り」というものがあります。ここにも「コピーは時代によって他のメディアの影響を受ける」と書いてあります。

中村:コピーとメディアの関係ですね。

権八:秋山さんご自身は自分の文体はそんなに変わっていない、スタイルは変わっていないとおっしゃいますが、洋基くんが言ったようにインターネットやSNSなどが隆盛で、その中でコピーそのものは、変わってきたなという感じはありますか?

秋山:「マヨネーズ 空気入り」というキャッチフレーズはインターネット用のキャッチなんです。印刷用だと「空気を抱えたマヨネーズ」になります。これは新聞広告ですが、インターネット向けのコピーに変えたらどうなるかということで、実験的に書いた広告です。1999年当時は、ネットがそれほど拡大していなかったので、それを新聞でやってみようと。あとはデザイナーの服部一成さんがどう反応するかも見たかった。メディアによって文体というのは明らかに違いますよね。

一同:なるほど。

秋山:「空気を抱えたマヨネーズ」はネットのキャッチにはならなくて、どうしても文章のキャッチフレーズ、ということになるのではないかと思いました。そういう点に注意して書いたコピーですね。

権八:確かに「マヨネーズ 空気入り」、のほうがよりデジタルな印象を受ける。

中村:ちょっと散文的な感じですかね。

秋山:単語ですね。ワード。

澤本:秋山さんが書かれたものは、「これは秋山さんだな」と何となくわかります。キユーピーマヨネーズ以外の広告を見ても、秋山さん“ぽい”と感じるんです。最近では、「これは○○さんぽい」「○○さんの色がする」とコピーから感じることが減っていて、コピーライター個人の色が薄れているように思うんですが、その点はいかがですか?

秋山:僕が遅れているのかもしれないけど、文章から抜けられないというのかな。コピーは文章からはじまったと思うので、信号になりきれないんですよ。信号は共通のものなので、人格が消滅します。文章は人が書くものですが、信号は発信するもので、本来書くものではない。だから、書かないことによって人格がなくなっていく。それで短時間の中では効率は上がると思う。

澤本:人格がなくなってきていると。記号的に出してしまっていることが多くて、その記号が効くか、効かないかということを今はやっている。

秋山:効率の問題ですね。効率は上がるかなと思いますけど、それが全部同じになってくると全体が沈みますよね。フラットになってしまって。

次ページ 「コピーライターはコピーから離れて考える時間をもったほうがいい」へ続く

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