- 広告とPRは違うものですか?
- 「PR」にも有償のものがあるんですか?
- 「広告」は「広告」と表記しないと「ステマ」になるんですか?
- 「広報」と「PR」は何か違うのですか?
- 結局・・・PRの企画って何をすればいいんですか?
※このコラムは学生のプライバシーの保護のためフィクションを加え内容を再構築しています。
4月から山形市にある東北芸術工科大学の企画構想学科で教鞭を執っている。戦略PRのほか、企画構想、メディア論、自己表現などの講義を行う。東北地方にある芸術大学は数少ないが、学生たちの就職率はとても高い。
芸術家を目指す学生ばかりでなく、プロダクトデザインや企画/マーケティングを学ぶ学生も多く在籍しており、独創性の高い大学の教育方針のため、県内だけでなく東北各県や関東など他地域からの学生が多い点も特徴だ。
学長の根岸吉太郎さん、 小山薫堂さんほか、中山ダイスケさん、山崎亮さんなど各業界の一線で活躍中で著名な方たちが普通に大学内にいて、少人数での教鞭をとっている。
東京五輪に関連して「デザイン」と「ビジネス」との関係が、いま注目されている。クリエイティブを熟知した上で、企画職などとして活躍できる人材が、民間企業などでも今後さらに必要とされていくことだろう。
着任前の説明会で「戦略PR」についての説明を行った。学生からいくつか質問の手が上がった。
先生!広告とPRは違うものですか?
「広告」「広報」「PR」「パブリシティ」・・・つい用語の解説を省いてしまった。確かに意外と「違い」を答えることは難しい。
「広告」はメディアの広告枠を広告主が金銭で購入し、広告主はメディアに「広告コンテンツ(制作物)」を提供する。内容、掲載期間・回数・大きさ(長さ)等はメディアではなく、広告主(広告会社)が決める。
「広報/PR」では金銭で広告枠を買うことはない。広告料は払わずに記事あるいはニュースとしてメディア掲載されることを目指す。載せる・載せないの判断はメディアが行うため「客観性」が高まる。
「パブリシティ」という言葉は一般的にはPR活動の一環として企業がプレスリリースの発行や取材対応(促進)などを通してマスメディアに自社に関する情報を取り上げてもらう(報道)こと。広告ではないので対価は払わない。
…と、解説した直後に感じた私の違和感…。
「PR」にも有償のものがあるんですか?
「ペイドパブリシティ」という言葉もあるから、実際はややこしくなる。新聞社や雑誌社と協力し、見た目上は記事の体裁をとるが、これは実質広告だ。「ペイドパブリシティ」あるいは、単に「記事広告」と呼ぶ。メディアにしてみれば、あえて報道したい内容ではない。一方の企業側はどうしても載せたい。その「落とし所」として、こうした「枠」を最初から設けている場合もある。ケースバイケースで「タイアップ」として実施する場合もある。
事実上の広告だが、通常のパブリシティと同じく「記事」の形をしているので、客観性を持たせることができる。(人にもよるが…)
「広告」は「広告」と表記しないと「ステマ」になるんですか?
本来広告であれば、「記事」の体裁をとってはいても「広告」と明記しないといけない。これをしないと、いわゆる「ステマ」になる。「広告」という表記がない「記事広告」は、消費者に不利益を与え、不当表示にあたる可能性があるからだ。
ジャーナリズムや公共性などの建前上、メディアはスポンサー以外から「広告料金」を受け取ってはいけないが、広告収入は得たい。古くから視聴者や読者に豪華なプレゼントなどを企業が提供してマスメディアに商品や企業名を露出させる「プレゼントパブリシティ(通称プレパブ)」は行われてきた。また、「記事広告」が、実際には媒体と広告会社との間で売買されてきた。
いやはや・・・本音と建前、昨今の事情や伝統的な手法などが、ごちゃごちゃしている。何が正しいルールなのか、どうにもわかりにくい。
先日、Yahoo!ニュースのスタッフブログで下記のような考えが示された。
数多くの媒体から記事の配信を受けているYahoo!ニュースでは、ニュース提供各社との契約で、広告としての表記の有無にかかわらず記事広告やタイアップ記事を配信することを従来から明示的に禁止しており、また、記事中のリンクから広告に誘導することも禁止しています。
数多くのメディアから配信を受け取り掲載するYahoo!では、今後、「記事」か「ステマ」かの真偽を見分ける「目利き」の役割が重要になってくる。ただ、実際には、記事なのか広告なのか、見た目ではわかりにくいコンテンツも最近は増えてきているのではないか(例えば調査パブリシティを依頼する企業と調査を実施しリリースを行う調査会社との関係など)。