2015年、世界全体で2.7兆円分の広告費が水の泡に——アイルランドのIT企業ページフェアは10日、Webサイト上の広告を見えなくする「広告ブロックソフトウエア」が2015年、218億ドル(2兆6800億円)の損失をもたらすとの試算を発表した。世界全体の広告費の1割強に届く規模だ。さらに来年16年は被害額が2倍近く伸び、414億ドル(5兆1000億円)に達するという。米アドビシステムズとの共同調査。
世界の広告ブロックソフトウエアの利用者は、前年比41%増の1億9800万人と推計した。ほとんどがパソコンのブラウザでの利用だが、モバイル端末でも広告ブロックが広まる可能性が出てきた。
その火種になりそうなのが、米アップルが9月に発表予定の新OSだ。最新バージョンの「iOS9」から、「ブラウザ『Safari(サファリ)』に、広告ブロック機能が加わる」という観測がある。米ネット・アプリケーションズの統計では7月、モバイル端末からのWebアクセスの4割以上が「Safari」からだった。グーグルのAndroidOSには、独広告ブロックソフト大手アイオー(Eyeo)がことし5月、広告ブロック機能を持つブラウザアプリの試験版の配信を始めた。
「広告ブロックソフト利用者は、好きなWebサイトを見れば見るほど、そのサイトに重大な損失を与えている。その気がなかったとしても、だ。これは悲劇ではないか」と、ページフェアの共同創業者でCEOを務めるショーン・ブランチフィールド氏はコメントを寄せた。「(広告収入が)20年間にわたって維持してきたオープンなWebはいま、崩壊に向かっている」(同)