みなさん、こんにちは。
このコラムでは、ブランドや商品のメッセージが広告だけでは届きにくくなった現在の情報環境の中で、既存の広告、さらにはPRとは一線を画した新しい方法論として、「ブランデッドコンテンツ」を中心テーマに据えてパブリック・リレーションズ発想のマーケティングへの活かし方を考えてきました。
今回は、本コラムの総括として、ブランデッドコンテンツが自走し、売りにつながるために押さえなければいけないポイントと今後の可能性についてまとめてみたいと思います。
この連載をきっかけに、ブランデッドコンテンツに積極的に取り組んでいる企業の方々とお話をする機会が増えました。目的や狙いはそれぞれ違うものの、ブランデッドコンテンツに取り組む上での課題意識や実際にやってみて見えてきた見解について議論させていただく中で、共通点として浮かび上がってきたポイントがあります。
今後ブランデッドコンテンツに取り組むにあたり、押さえておくべき点として、3点あげたいと思います。
情報接点の多様化にどう対応するか?
やはり、テレビコマーシャルだけではリーチできない消費者層が現れはじめたことを、リアルに多くの企業のマーケターの方々が感じています。
スマートフォンや、テレビのハードディスクレコーダーが普及する前のテレビCMでのリーチを100とすると、現在は同じ投資をした場合にそのリーチは半分の50しかないという状況です。特に、10代~20代の若い世代はテレビではなく、スマートフォンを情報デバイスとして積極的に活用しているため、いかに新しいデバイスを組み合わせて複合的に情報接点をつくるのかがポイントとなります。
さらに情報を拡散させるためには、マスメディア・リアルなどあらゆるタッチポイントを利用し、コンテンツの種類や情報の出し方、タイミングなど情報波及の流れを上手く設計することが大切です。
また、デジタルデバイスはテレビより視聴データやユーザーデータを細かく集めることが可能なため、キャンペーン一発勝負で大きな効果を出すというより、とりあえず試してみて、そこからPDCAをまわすことで、その知見が次に活かされていくという意識で長期的に運営していくほうが結果的に高い成果を生むことができます。
自社の顧客の特性や、新たな情報接点における情報波及の構造などの知見をなるべく早く、多く集めることがより効果的なコンテンツの開発にとって、きわめて重要だと言えるでしょう。
マス広告発想からの脱却
広告枠に頼らず、コンテンツをアーンドメディア上で話題にしていくことによって情報を消費者に届けていくためには、今までのような伝えたいメッセージを中心に考えるマス広告発想のコンテンツではなかなか受け入れられません。
現在、日本におけるテレビCMの主流は15秒です。15秒では、盛り込めるメッセージ量が少なく、消費者の理解を促す、興味関心を強く引くという効果を期待するには限界があります。
もちろん新商品やサービスの認知をあげるという点においては、まだまだ絶大な効果がありますし、流通などの取引先の仕入れ担当者に対する説得材料としては一番わかりやすく動かしやすい施策であることは確かです。
しかし、定番商品や企業のブランドに関わるものであれば、自分たちが伝えたいメッセージを、いかに消費者が喜んだり、面白がったりするコンテンツとして変換できるか、消費者の視点でコンテンツを考えていくことが、これからの時代に必要な発想です。
動画やリアルなどの施策を消費者に楽しんでもらい、マスメディアやソーシャルメディアを通じてそのコンテンツが拡散されることで、さらに情報接点のリーチを広げることができるのです。