コカ・コーラとスターバックスに学ぶ、バナー広告では得られない「メディア運営の可能性」

コカ・コーラとは異なるアプローチのスタバ

コカ・コーラとは全く異なるアプローチで、オウンドメディアへの取り組みをされているのがスターバックス コーヒー ジャパン(以下スターバックス)が取り組んでいる「TOKYOWISE」というWEBマガジンです。

「ABOUT TOKYOWISE」を見て頂くと分かるように、このサイトはパラグラフと七洋が運営するWEBマガジンTOKYOWISEをスターバックスが一社スポンサードする形になっています。
そういう意味では、厳密な意味でのオウンドメディアではありませんが、企業がメディア作りを行う一つの選択肢として注目すべきアプローチと言えると思いますのでご紹介したいと思います。

スターバックスはTwitterやFacebookの公式アカウントに100万人単位でフォロワーがいることで有名です。ソーシャルメディアのアカウント運営においても代表的な成功事例と言えるでしょう。

ただ、実はスターバックスとしては公式アカウントの規模が大きくなることである意味マス化し、新商品発売などのメジャーなネタでなければ大きな反応が得られなくなっているという感覚があり、自社アカウントでのコンテンツ発信だけでは情報感度の高い人を満足させられていないのではないか、という問題意識があるそうです。

そこでスターバックスの長見明マネージャーの言葉を借りると、この課題の解決方法に対する一つのチャレンジとして「ハイエンドな雑誌の広告枠を買う代わりに、媒体のスポンサーをする」というアプローチにチャレンジしてみているそうです。

ネットメディアにおいては、どうしてもPVが広告収入に連動しているため、炎上ネタを中心に運用されるケースもありますが、一社提供のWEBマガジンであれば、そうしたPVに左右されすぎないハイエンドな雑誌と同様のメディア運営が可能になります。

当然、TOKYOWISEに並んでいる記事はほとんどがスターバックスとは関係の無い記事ですが、スターバックスはもともと美味しいコーヒーを提供するだけの会社ではなく、顧客にとってのサードプレイス(第3の場所)を提供するというコンセプトを持っている会社です。

長見氏としては、TOKYOWISEの一社スポンサーを行うにあたっても、公式SNSとは違う新しいコミュニティをつくることで、公式SNSを通じたコミュニケーションとは異なるコミュニティへのリーチが可能になり、TOKYOWISEのコンテンツを通じてお客様に楽しんでいただく機会も創出できるのではないかという仮説を持って取り組んでおられるそうです。

当然スターバックスがこのメディアで目指しているのはバナー広告の置き換えではなく、スターバックスならではのメディア提供の支援と言えるでしょう。

デジタルマーケティングにおいては、ページビューやコンバージョンなどの効果測定ができるため、ついついそれらの指標ばかりを見てしまいがちですが、そもそも企業自身がメディアを運営できるということには、そういった直線的な売上貢献だけではなく、様々な可能性があるということを、両社の事例から感じていただければ幸いです。


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徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

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