【クリエイターが語る金沢(3)】金沢から打って出る――大久保浩秀氏(クリエイティブディレクター)

広告界最大級のイベント「全日本広告連盟大会」が今年5月、北陸新幹線開業に沸く金沢市で開かれ、全国の広告関係者をはじめ1400人が来場しました。広告界の業界団体である公益社団法人全日本広告連盟(全広連)の主催によるもので、今年で63回目を迎えます。
この連載は、全広連と宣伝会議とのコラボレーションの一環で発行した新聞「アドバタイムズ特別号」の記事の一部を転載するものです。新幹線開業で注目される北陸経済や、金沢の広告界・クリエイティブの今を紹介します。

媒体費ゼロで始まった「レディー・カガ」

大久保浩秀氏

大久保浩秀氏

山中、山代、片山津、粟津からなる加賀温泉郷のPRを目的に、2011年10月から実施している「Lady Kaga(レディー・カガ)」プロジェクトがお陰さまで話題になっています。温泉旅館の女将や芸妓さんに登場してもらい、おもてなしの心をアピールしてもらうものです。国内だけでなく、動画を見た海外のメディアからも取材の依頼が来るなど様々な反響があります。いくつかの広告賞にも選んでいただきました。

クライアントは温泉旅館の組合です。東日本大震災が発生し、沈滞ムードがただよう中で、「地元の活性化はもとより、日本が元気になるようなメッセージを発信したい」「新幹線開業に向けて何かやりたい」という2つのオーダーをもとに企画しました。

制作したのは、ユーチューブにアップした動画と、JR加賀温泉駅に無償で掲出させてもらったポスター。つまり媒体費はゼロです。制作予算も限られていたので、アートディレクターやCMプロダクションにも協力してもらって手弁当で進めました。「レディー“カガ(加賀)”」というキャッチコピーは当初は却下されましたが、最終的には受け入れてもらいました。

話題になった後も旅館の集客では苦戦が続いていましたが、新幹線開業後は集客が好調と聞いています。また、この件をきっかけに、石川県や加賀市による加賀温泉郷のキャンペーンもお手伝いすることになりました。

注目されているここ1~2年が勝負

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「レディー・カガ」のポスター

金沢や富山などの広告会社のクリエイティブスタッフはどこも人数が少ないですが、制作会社やフリーランスのクリエイターは多くいます。Uターン組や、広告会社を早期退職した人などもフリーで仕事していたりします。デザイナーなどのレベルは他の地域に劣らないと思いますし、僕が手掛けている仕事も8割方が地元のクリエイターで完結しています。

クリエイター間の交流も活発です。金沢アートディレクターズクラブ(金沢ADC)や、富山コピーライターズクラブを起源とする「北陸コピーライターズクラブ(HCC)」などでそれぞれ競い合っています。

これからは地元の仕事に限らず、積極的に外に出ていくことが課題だと考えています。東京のクライアントの北陸進出をサポートしたり、逆に金沢の会社と東京に出ていったり。当社には東京にも営業がいるので、東京のクライアントの仕事にも対応できます。東京のプロダクションやクリエイターが金沢に進出してきている中、こちらも打って出たいと思います。

東京などに出張すると、やはり金沢が注目されていることを実感しています。でもその波もここ1年~2年だと思いますので、ぜひクリエイティブでも注目されるようにしていきたいですね。(談)

大久保浩秀(おおくぼ・ひろひで)
日本エージェンシー クリエイティブディレクター/CMプランナー/コピーライター。1974年生まれ。99年、日本エージェンシー入社。営業を経て08年からクリエイティブに異動し、現在に至る。主な仕事に、加賀温泉郷協議会「レディー・カガ」、北陸電力、JR西日本など。

全日本広告連盟金沢大会
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