――「釜山国際広告祭」はどのような広告賞でしょうか?
韓国・釜山市を舞台に毎年開催され、今年で8回目を迎える広告祭です。参加者として広告業界から2000人、一般来場者は約8万人が集まります。釜山国際広告祭のスローガンは「Share Creative Solutions, Change the World」。クリエイティブの力を使い、世界を変えていこうと考えて行っています。政府や釜山市から後援してもらっていることも含めて、社会に還元していけるようなイベントにしたいと常に考えています。
作品応募は365日、24時間、オンラインから無料でできます。(※ただし、パネルは郵送が必要)。現在、全体で22部門あります。元々は、産業別にカテゴリーを分けて実施していましたが、審査の方式に慣れず、時間がかかり過ぎるなどの問題もあり、3年前から今の形のカテゴリー分けに変更しました。
――審査はどのような考えで行っているのでしょうか。
審査員には、アドスターズが考える「Discover Diversity(多様性の発見)」の方針を説明した上で、審査に望んでいただくようにしています。グローバルな広告賞では、アジアの文化や背景までを読み取った審査は難しいと考えています。世界最大の広告祭であるカンヌライオンズでも韓国をはじめ、アジア地域の受賞作はまだ限られています。我々は「アジアを理解してほしい」のではなく、ダイバーシティを理解して審査することが求められていると考えているのです。もちろん説明をしたからと言ってすべてが、うまくいっているとは言えませんが、世界中から集まってくれている審査員にはその考えに共感をいただいています。
――今年のテーマについて教えてください。
今年のテーマは「beyond」です。「広告や広告祭の可能性」を拡張していこうという願いを込めています。日本からも約80名の方が来て、ネットワークパーティーなどを通じてアジア各国の方々との接点を作ってもらっています。日本と韓国、中国も含めアジア全体で、クリエイティブの可能性を広げられればと考えています。
特に我々は、「ヤングスターズ」という若手育成にも力を入れています。約500人の大学生が参加してくれていますが、広告界の裾野を広げられるようにワークショップなどを実施しています。韓国では、景気悪化で若手に仕事がないことが社会問題となっていますが、その中でも就職希望はIT系企業などに集中し、広告界のクリエイティブに対する就職人気が陰りを見せています。さらに、景気の悪化から、広告の仕事自体が減っているという悪循環もあります。こうした社会問題に対しても、広告祭が良い影響を与えられればと考えています。その一貫で、ヤングスターズで優秀だった学生のインターンシップも始めました。こうした活動が広がっていくように、これからも様々な仕掛けをしていきたいと考えています。
――最後に日本に向けて、メッセージをお願いいたします。
まだ8年目と世界的に見ても若い広告賞ですが、だからこそ新しいことに取り組んでいきたいと思っています。目指す先は、広告祭ではなく、SXSWのようなムーブメントにしていくことです。今は、応募点数でアジア最大の広告賞になっていますが、受賞作の品質向上を目指して取り組んでいきたいと思います。
今年は、日本から電通グループからだけでも1000を超える応募がありました。昨年までは日本からの応募が全体で700作品程度でしたので、とても嬉しく思っています。今後、日本とも連携して新しいクリエイティブの可能性を見つけていけると良いと考えています。