企画が採用されなかったら、実現する座組みを自分で考えればいい(ゲスト:角田陽一郎さん)【後編】

テレビ局の中で脈々と受け継がれている企画の伝統

中村:そんな角田さんが今注目されている局や番組はあるんですか?

角田:「世界の果てまでイッテQ!」は面白いと思います。ウリナリや、T部長でおなじみの土屋敏男さんが作ってきた日テレさんの伝統だと僕は思います。伝統って大きくて、TBSでいうと「8時だョ!全員集合」と「ザ・ベストテン」が作った局の伝統が脈々と流れてるんですよ。

澤本:その伝統というのは?

角田:歌番組で中継先から歌うというのはザ・ベストテンが始めたんですよ。それまでは歌番組はスタジオの中で歌うものと思われていました。でも、それだと収録の日に来られるアーティストしか出演できないですよね?

でも当時の先輩たちは、「ベストテン」だから1位から10位まで今本当に人気の曲を番組の中で発表したかった。そこで、「出られる人だけで番組をつくる」から、「出られない人は出られないと言っちゃえばいい」と発想を変えたんですよ。その来られない理由の言い訳をするのを久米宏さんにお願いして、あの名調子が生まれたし、遠くのコンサート会場や新幹線の中から中継してしまおうという発想も生まれた。

スタジオを出てロケに行って何かしましょうという発想をバラエティに組み込んだのも、元をたどればザ・ベストテンだと思っています。それが「学校へ行こう!」や「さんまのからくりTV」「金スマ」になっていった。

澤本:そう言われるとそこに共通点がありますね。

中村:イッテQは、土屋さんの得意な、ちょっと向こう見ずなやり方みたいなことですか?

角田:向こう見ず、無茶振りだけどやっちゃうみたいな。あの体育会系な感じが日テレさんの伝統で、僕らが同じようなことをしても、視聴者に伝わる感じが少し変わっちゃうんですよね。

一同:へえー。

角田:それが脈々と受け継がれている職人技というか、スピリットだと思っていて。各局さんそれは持っていると思います。ちなみに、テレビは昔よりつまらなくなったとよく言われますが、昔の番組を見直してみると、必ずしも過去の番組なら面白いわけでもないんですよ。皆思い出の中で、高校生や20歳くらいで見たテレビや映画が一番いいに決まっているんです。その人の人生が一番輝いているときだから。30歳40歳になって、「あの頃のテレビは面白かったね」という人がいたら、「いや、あなたの人生が輝いていたんですよ、あの頃は」と言いますね。

一同:

角田:モテなかったしお金もなかったかもしれないけど、若さと体力があるから。だから、体力の問題かもしれない(笑)。

権八:見る側の体力。

角田:見る側の体力がなくなってきてるから。やっぱり自分に体力があって、活気があった頃に見ていたものの思い出の方が面白く思えるんじゃないかと思います。

権八:よくこの番組で名前の出てくる弊社シンガタの佐々木宏なんかは体力があり余ってるんですよ。テレビ大好きだし、「テレビがつまらないというヤツがいるけど、よく見てみろ」と。「すごく面白いぞ」と。いつも言っていますね。

角田:この本にも書いたけど、人の「つまらない」という話を僕は1ミリも信用してなくて、でも人の「面白い」は100%信じるんです。

澤本:なるほど。

角田:「つまらない」と言っているのは、その人にそれを面白がるだけの素養や体力、もしかしたらセンスがないだけなんじゃないかと。一方で、僕にとってはつまらなくても、ある女子高生が面白いと思ったなら、少なくともその方が面白いと思った理由があるんだから、つくり手としてはその理由を探るべきなんじゃないかと思います。

澤本:そうだよね。すごく納得しちゃった。

中村:すごく納得するんですけど、角田さん本当にネガティブなんですか。むちゃくちゃポジティブじゃないですか(笑)。

角田:ネガティブですよ(笑)。

次ページ 「企画書にあいまいなパターンを1つ残しておく」へ続く

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