Wi-Fiスポットを無償で提供するアプリ、訪日客の行動分析も——販促NOW<MOBILE APPLICATION>(29)

ここでは、『販促会議』2015年9月号に掲載された連載「販促NOW-アプリ編」の全文を転載します。


周辺の観光情報や店舗情報などをタイムライン形式で取得することができる。

コンテンツの配信数は月間300万以上。クーポンやコンテンツを提供する企業や自治体にとっては、O2Oの観点で、高い効果が期待できる。

訪日外国人が急増している中、彼らの日本における不満のひとつとして挙げられているのが「世界に比べて日本は無料で使えるWi-Fiスポットが少ない」という点だ。実際のところ、日本には相当数のWi-Fiスポットが存在する。カフェや駅、商業施設などでは、様々なWi-Fiの電波が飛んでいることを確認できる。

しかし、なぜ外国人は「不便だ」と感じるのか。実はその多くのWi-Fiスポットは、KDDIやソフトバンクといった携帯電話事業者やNTTグループによって設置された施設であり、国内のスマホユーザー向けに開放されたものとなっている。そのため、訪日外国人はWi-Fiの電波を見つけることはできても、その電波に接続することができないのだ。

そんな中、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、Wi-Fiスポットを訪日外国人に向けて使いやすくする取り組みが広がっている。ワイヤ・アンド・ワイヤレスの「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」は、日本全国、最大20万か所以上のWi-Fiスポットを無償で使えるというアプリだ。単に訪日外国人に「無償」で提供してしまっては、ビジネスモデルとして成立しない。

ワイヤ・アンド・ワイヤレスでは企業や自治体と連携し、アプリを使っているユーザーに対して、情報とWi-Fi環境を提供。その代わりに、個人情報保護法の規定に従い情報の利用目的に同意してもらった上で、訪日外国人の行動履歴や利用者属性を得るようになっている。

この取り組みには訪日外国人が頻繁に訪れるドン・キホーテやビックカメラなどが含まれるのだが、量販店側とすれば、訪日外国人に対して、情報やクーポンを配信して、来店機会を増やせるだけでなく、彼らがどのようなルートを辿って、日本国内を観光しているかといった情報を知れるようになる。単にWi-Fiを接続した場所だけでなく、スマホのGPS情報から、訪日外国人が辿ったルートを特定できるので、かなりの分析が可能となるようだ。

「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」は2014年12月からトライアルでサービス提供されているが、この7月からは商用サービスとしてスタートしている。参加する自治体・企業は20団体以上となり、すでに70万以上もアプリがダウンロードされている。

ワイヤ・アンド・ワイヤレスはKDDIグループということもあり、国内ではauユーザーが使えるWi-Fiスポットがベースとなっている。それだけ使える場所が広いということもあり、訪日外国人にとっては便利なサービスであるし、情報を提供する企業側にとっても、訪日外国人を取り込める有益な仕組みと言えそうだ。


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■プロフィール
石川 温氏(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。

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