日本人はマーケティング4.0の議論に入る前に、まず「マーケティング」の意味を腹落ちすることが必須ではないか

もともとマーケティングの分類として4P、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)があげられますが、実は広告宣伝やプロモーションは4つの要素の一つでしかありません。

実は製品開発や流通チャネル、価格戦略の選択もマーケティングの重要な要素です。ネスカフェゴールドブレンドのようなコーヒーの製品を、日本のオフィスでもっと飲んでもらうにはどうしたら良いかという課題があった場合。ネスカフェアンバサダープログラムのような、バリスタというコーヒーを美味しく飲むための端末を開発し、その端末をオフィスの事務員の方々にアンバサダーとして立候補してもらうことで導入してもらう。その結果としてネスカフェのコーヒーの売り上げを伸ばす、という発想は、4P全部の変更を前提にしなければ生まれてきません。

ネスカフェゴールブレンド単体の商品をコマーシャルやプロモーションでどう認知してもらうか、という一つだけのPであるプロモーションだけに特化したアプローチからは絶対に、ネスカフェアンバサダーのようなアプローチは生まれてこないわけです。

そういう意味で、今の日本のマーケティングにおいて必要なのは、まず「マーケティング=広告宣伝」や、「マーケティング=リサーチ」というイメージを払拭するために、まず「マーケティング=Market+ing=市場+ing」であるという英単語の脳内翻訳から捉え直すことのように感じています。

市場ingつまりは、市場創造と言い換えた方がイメージしやすいかもしれません。

市場がもし無ければ、我々は自分が作ったものを売り込むためには一軒一軒お客さんを回って自分の商品を「売り込む」必要があります。日本の企業は伝統的にこの「売り込み」行為である営業が強い会社が多く、マーケティングよりもセリングが強いケースが多いのも事実ではあるのですが。

適切なマーケティングにより「市場創造」に成功することができれば、お客さんの方から市場にやってきて自分が欲しい商品やサービスを買ってくれるようになり、効率の悪い「売り込み」から開放されることができます。

逆に言うと、元々モノ作りや営業力の強い日本企業はマーケティングさえ正しく理解して自分たちのものにすることができれば、ネスレ日本のように「マーケティング4.0」的なアプローチを世界でもいち早く開拓し、世界で更に輝くことができる可能性を十分に有していると言えるとも思います。

個人的にも、今年のワールド・マーケティング・サミットのアンバサダー活動を通じて、自分の中でのマーケティングの理解の勘違いや誤解をちゃんとリセットし、アップデートを大変期待しているところです。皆さんとも会場でお会いできることを楽しみにしております。


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徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

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