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成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。
吉本 桂子(よしもと・けいこ)
ロイヤルブルーティージャパン 代表取締役社長
2006年5月、神奈川県藤沢市でティーサロン「茶聞香」を主宰する佐藤節男とともに、ロイヤルブルーティージャパンを創業。非加熱除菌による独自の茶抽出法を確立し、水出し茶のボトリングに成功する。2007年から発売、3年連続でベルギー・モンドセレクション金賞受賞。2013年6月、DBJ女性起業大賞(日本政策投資銀行主催)受賞。
ワインボトル入り高級茶の普及で業界の復活めざす
いつでも、どこでも、誰でも、均一な安定した風味で楽しめる高級茶――それが、「ロイヤルブルーティー」のコンセプトだ。ワインボトルに入った高級茶をワイングラスに注ぎ、まるでワインやシャンパンのように、その色・香り・味わいを楽しむ。「本物のお茶を、より多くの人に伝えたい」との思いから、代表取締役社長の吉本桂子氏が開発から手がけ、構想から7年が経った2007年5月に発売された。
ロイヤルブルーティーのミッションは、①本物のお茶を高級ブランド化する(本物のお茶とは何かを伝える。世界中の高品質な手摘み茶、特に日本茶生産者の高度な生産技術伝承に貢献する)、②お酒を飲まない・飲めない人に対するサービスを向上する(航空機ファーストクラス、高級飲食店にふさわしい高級ノンアルコールを定番にすることで、さらなる質の高いサービス向上を図る)、③新しいティーセレモニー「茶ちゃ宴えん」の普及振興(国籍・宗教・性別・年齢・思想・嗜好などを問わず、どんな人でも楽しめる多様性を尊重した、ノンアルコール飲料でもてなすお茶席スタイルのパーティーをグローバルスタンダードにする)、の3つ。
「お茶といえば『機械摘み・ブレンド・着香』が当たり前だと思われているのが、いまの日本のお茶業界。また、質の高い手摘みの高級茶は、淹れ方が難しく、誰もが気軽にというわけにはいきません。トップクラスのお茶の存在を伝え、急須を使わずに楽しめるようにしたい。それを実現することで、お茶業界全体を活性化できると考えました」と吉本桂子社長は話す。
2011年3月11日の東日本大震災発生に伴う風評被害や、贅沢品の買い控えにより、同年3~11月の売上は前年同月比の2分の1程度に落ち込んだものの、その後は順調に復調、発売5年目を迎えた昨年には、ついに事業が黒字に転じた。着実な成長の秘訣は、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションと、マーケティング戦略のすべての要素において独自路線をとることで、業界の既存プレイヤーとカニバリズムを起こすことなく、業界に新しい価値をもたらすブランドとして、ポジションを確立したことにある。
プロダクト戦略:世界初の技術開発
本物の高級茶の色・香り・味わいを伝えるため、原材料は世界中から選び抜いた茶葉と水だけを使用。茶葉本来の繊細な味わいを損なわないよう、熱湯ではなく、3~6日間をかけて水出し抽出する。食品添加物は使用せず、茶葉の劣化を防ぐために、加熱殺菌ではなく非加熱ろ過除菌製法を採用。非加熱で生水をボトリングする技術は、当社が初めて開発したものだ。そうして抽出したお茶は、機械ではなく手でボトルに詰める。4名体制で、製造本数は月間約3000~4000本。飲むときは、お茶の色・香り・味わいを五感で楽しめる、ワイングラスを使うことを推奨している。
価格戦略:既存商品のワンランク上
人々のライフスタイルの変化に合わせ、手軽に飲めるペットボトル茶が普及した一方で、急須で日本茶を淹れる習慣が薄れるなど、高級茶葉の重要が低迷している。こうした中、吉本氏は、ロイヤルブルーティーを、お茶業界の既存カテゴリーである高級手摘み茶葉とも、機械摘みの量産型茶葉とも、ペットボトル茶とも競合しない、新たなカテゴリーをつくる存在と位置づけている。
「ロイヤルブルーティーは1本2800円~30万円と高価で、誰もが飲めるものではありませんが、ボトリングティーによって高級茶の裾野を広げるとともに、既存カテゴリーの立ち位置を明確化し、お茶業界全体を活性化することができると考えています」(吉本氏)。
ペットボトル茶がもたらした、お茶の大衆化を否定することなく、喫茶文化の歴史の新しい一端を担いたい考えだ。
販路戦略:高級飲食店や百貨店に限定
「お酒を飲まない・飲めない人が料理とともに楽しめる、ワインやシャンパンと同様に格調高いノンアルコールのドリンクは、これまで存在しませんでした。この未成熟市場に、私たちが選び抜いた高級茶を届ける価値があると思いました」と吉本氏。
販売先は当初、高級レストラン、ホテル・旅館、日本航空国際線ファーストクラスなどに限定し、ブランドイメージを固めていった。そこからじわじわと認知が広がり、コアなファンから「自宅用に買いたい」というニーズが出てきたタイミングで、2010年に百貨店、2011年にネット通販へとB2Cの販路を広げた。現在は、B2BとB2Cの売上がほぼ半々。高価格帯商品ながら、「ここぞ」というときの贈答品としての需要を中心に、個人客からも一定の支持を得ている。
プロモーション戦略:茶宴と口コミ
宣伝・広告活動は原則行わず、製品の内容に共感した人に、導入してもらうという方針。営業開拓は「茶宴」で行っている。「茶宴」とは、おもてなしの新たなスタイルとして、コース料理とコース茶(食前・食中・食後)を楽しむ宴。これを定期的に開催し、ソムリエや料理長など、法人の見込み顧客の決裁権者を招待する。「参加した企業の約半数は成約に至ります。特に導入してもらいたい飲食店には、当社からその店に出向いて、来店客向けに茶宴を開催します。お客さまが喜んでいる姿を見ていただくことが、導入決定の決め手になることも多いです」(吉村氏)。
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