ICTの活用で旅をしたくなる、明確すぎる目的をつくり出す—百戦錬磨

株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第4号(2015年8月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。


上山 康博(かみやま・やすひろ)
百戦錬磨 代表取締役社長

2007年8月までKLab 取締役営業本部長を務め、2007年9月~2012年3月まで楽天トラベル執行役員。2012年6月より現職。

ICT×旅行で新市場をつくる

日本全国の公共性の高いイベント時に、民泊を提案。

「ICTを活用して明確すぎる移動目的を創り出し旅行需要・交流人口の拡大を図る」の理念を掲げ、2012年6月に設立された百戦錬磨。同年3月まで、楽天トラベル執行役員を務めていた上山康博氏が代表取締役社長を務める。

設立から約3年。「ICT×旅行」を切り口に同社が提供するサービスはマンション、一軒家の空き部屋と宿泊希望者をマッチングする「TOMARERU」、旅行者に民泊を提供する宿泊仲介サービス「とまりーな」、スポーツイベントを検索し、参加登録、決済を行うことができる「JOINtly SPORTS」、岩手県・遠野市での「樹木葬」まで、多岐に渡る。

楽天トラベル時代から、地域振興の新事業開発に取り組んできた上山氏。新興企業とはいえ、大企業に成長した楽天の中では関係者も増え、次々と生まれるアイデアを具現化するスピード感はどうしても遅くなってしまう。「新しい仮説を、もっとスピーディに試していきたい」。そんな思いから、起業を決意した。

東北のIT人材を生かす

「とまりーな」を利用して民泊できる、青森県の宿。その地域の生活を体感できるのも、民泊の魅力。

百戦錬磨の拠点は、宮城県・仙台市にある。地域振興に携わる中で、東日本大震災を経験。東北地方の再生をめざし、地域自治体や行政と一緒になり、事務局長企画調査官として「東北観光博」を企画・実施した縁もあってのことだ。加えてICTを事業の柱に掲げ、Webサービスを企画・開発する構想を持っていた同社にはIT人材が必要だが、東京では需要が多く、採用が難しい状況にあった。「地域、特に東北に目を向けると、優秀な技術者がいるが、ビジネスモデルを考える人がいないために、東京の会社の下請け的な仕事に甘んじているケースが多く、十分に活躍の場があるように思えなかった。東北に拠点を置くことで優秀なエンジニアを採用できるとの考えもあってのこと」と上山氏は話す。

民泊を取り巻く社会情勢

近年、日本でも訪日観光客が増加する中、Airbnbが話題になるなど「民泊」というビジネスモデルが注目を集めつつある。しかしながら、いまこの単語が話題になるのは国内において旅館業法に違反している、というネガティブな側面。これに対し、上山氏は「Airbnbは時価総額3兆円と言われているが、それは民泊というものに対する社会の期待の表れ。とはいえ、儲かれば手段を選ばなくてもよいということにはならない。私たちが目指しているのは、ブラックはもちろん、グレーにも手を出さない。ホワイトな事業として、民泊ビジネスに取り組むこと。社会から求められていることなら、時間はかかっても法律を変えるよう働きかける取り組みをしていきたい」と話す。

「TOMARERU」のコンセプトルーム。

具体的には同社では、一般の人が持っている部屋を一般の人が貸し出すのではなく、ホテル・旅館などの事業者が借り受けて、宿泊施設として運営するというアプローチを考えている。「外国人旅行者の方は特に長期滞在を好む傾向にあるが、日本の宿泊施設は短期滞在を想定したサービス設計になっている。都心部のマンションなどの物件、さらに地域においては空き家や古民家などを事業者が運営することで、新しい長期滞在のサービスモデルも提供できるようになるのではないか」と上山氏は考えている。

「続きは100万社第4号本誌をご覧ください」


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