グランプリをはじめとする前回の受賞者たちが、どのように課題に取り組み、栄冠を勝ち取ったのか。主要4賞を受賞した4人に、傾向や対策、受賞のコツ、受賞後の変化などについて話を聞いた。
宣伝会議賞 グランプリ
人生の半分は無職です。
(ゆうちょ銀行 「こつこつ貯金することが、カッコイイ」と思えるアイデア)
「書かない」こと「出さない」こと
受賞のコツを書いてほしいとのことで考えてはみたのですが、「受賞のコツ」などと謳っているものを一切信じないことが受賞のコツではないでしょうか。すでに誰かがやった方法なんてマネしてたまるか。そんな方から受賞するはずですし、受賞してほしいとも思います。なので、わたしが今から書く内容も「やってたまるか」とお読みになってみてください。もちろん、「受賞のコツなどと謳っているものを一切信じないという受賞のコツなんて信じてたまるか」というのもアリでしょう。
大前提として、コピーライティングでは「クライアントの課題をいかに解決するか」というプランを徹底的に考えることが大切になりますが、今回はより手法的な部分で「わたしが心がけた2つのこと」をご紹介させていただきます。
第一に「書かない」ことです。頭に浮かんだコトバをなるべく書き留めないようにしました。そのコトバに思考が拘束されてしまうからです。頭の中でのみ考えつづけ、最後の最後までどうしても残ってしまったシボリカスのようなコトバの断片だけを手で紙に記していきます。パソコンは使いません。コトバが美しい行間で並んでいるのを見ると、イメージが息苦しくなるから。罫線がうるさくない、無地(もしくは薄い方眼)のノートを使います。あとは、シボリカスたちが雑然と並んでいる様子を俯瞰し、コピーとして浮かび上がってくるまでヴンヴン唸りつづけましょう。
第二は「出さない」ことです。コトバを書き惜しんだにも関わらず、無数のコピーが漏れ出てしまったら、せめてもの償いとして本当に良いものだけに絞り込むようにします。どれもこれも愛おしく、どれもこれも受賞しそうに思えてしまいますが、それはとても恥ずかしい現象なので。わたしはたしか約200本を書き、約20本を応募しました。「10分の1まで絞る」くらいの姿勢でゼロ次審査を自ら行うと、本当に良いコピーが「他よりもなぜ良いのか」という理由付きで見えてきますし、それをきっかけにもっと良いコピーが閃いたりもします。
以上です。「書かない」だとか「出さない」だとか言ってしまったので、無事に掲載されるか心配になってきましたが。
あなたにとって宣伝会議賞とは?
当然ですが、グランプリを受賞して劇的に変わるほど人生は甘くありませんでした。前回の宣伝会議賞のスローガンが「グランプリまで、飛んでいけ。」でしたが、正しくは「グランプリから、這っていけ。」ではないかと思っています。良い意味で。受賞後になにをどうしていきたいのか。事前にイメージしておくことが大切です。
応募者に向けて一言
まずは「受賞後になにをどうしていきたいのか」を考えてみてください。それが受賞までの近道になり、受賞からの近道にもなります。わたしは今、田辺百一という名前でLIGという会社のCopywriterをやっています。もし何かありましたら、いつでもブログなりTwitter経由なりでご連絡ください!
宣伝会議賞 コピーゴールド
世界にはまだ、しょうゆをかけると
おいしくなるものが、いっぱいあると思う。
(キッコーマン 企業広告)
キーワードを組み合わせる
自由に書いていいと言われて、逆に困っているのですが…とりあえず、例として挙げられていた①傾向と対策②受賞のコツ ③受賞後の変化、について書きます。
①傾向と対策
難しい(よく知らない)課題が多くなってきている印象がありました。なので、一応全課題のコピーを考えるけど、認知度の高そうな課題に時間を多く割くようにしていました。
②受賞のコツ
正直分かりません…なので、前回どうやったのかを書きます。前回は、各課題に関連するキーワードを列挙して、その全組み合わせを確認することをやりました。こう書くと簡単なのですが、頭の中だけでやると確認漏れがでるし、手書きは厳しそうなので、表計算ソフトの関数を使って入力したキーワードの全組み合わせを表示させました。それを見て面白くなりそうな組み合わせを選び、その組み合わせを含むコピーを考えました。前回(第52回)受賞した2作品も、このやり方でつくりました。講座とかで教わるやり方とは違う、特殊なやり方だと思うので、参考になるかは分かりません。
③受賞後の変化
異業種なので、特にこれといった変化はありません。
あなたにとって宣伝会議賞とは?
一年のうちで、唯一コピーを考える貴重な期間でした。毎年自分の自信作が選ばれなくて、訝しがっていましたが、今思えば選ばれなかった理由はちゃんとあって、自分のコトバがどうすれば人に伝わるかを客観的に見つめ直す良い機会でした。
応募者に向けて一言
実際に世に出るコピーとは別の価値判断がされているようなので、ある意味今までにないコピーがつくれる(評価される)チャンスだと思います。アドバイスになっていない気もしますが、とにかくどんな今までにないコピーが見れるのかを楽しみにしています。