2020年東京五輪の公式エンブレムで、佐野研二郎氏デザインの使用中止が決まった。1日、大会組織委員会が東京都内で会見を開き、明らかにした。組織委は今後、新たなエンブレム策定に向けて動く。武藤敏郎五輪事務総長は「公募を大前提にする。より開かれた選考過程も検討し、できるだけ早く決めたい」と話した。
同日午後、ベルギー・リエージュ劇場ロゴの盗用疑惑など公式エンブレムへの批判の高まりを受け、遠藤利明五輪担当相はじめ森喜朗元首相、舛添要一都知事など関係者は臨時の調整会議を実施。「もはや一般国民からの理解は得られない」(武藤事務総長)として、使用中止を決めた。当初案に似たようなロゴがあることも懸念事項とされた。
事前にデザイナーの佐野研二郎氏本人から、「五輪への悪影響を考え、原作者として取り下げたい」との要請があったという。ベルギー・リエージュ劇場のロゴや、ヤン・チヒョルト展のロゴの盗作疑惑は改めて否定した。審査委員8人中7人が「やむなし」として取り下げに至った。佐野氏本人や家族に向けた誹謗中傷が続いているとの談話も出た。
すでに五輪エンブレムを広告などに掲載したスポンサー各社に対しては、「大変なご迷惑をおかけした。個別に今後の対応に関して話し合いをする」(武藤事務総長)。スポンサーには文書や面会などでの説明のうえ理解を求め、広告物では、日本オリンピック委員会・日本パラリンピック委員会が定めるエンブレムへの差し替えなどを呼びかける。仮に、テレビCMでエンブレムを表示したカットを差し替える場合、その費用は「数万円ではケタが足りない」(広告制作関係者)。実際は1.5秒ほどでも、編集作業や原版作成などで少なくとも1時間程度を要するため。音声などをかぶせた場合は、さらに倍だ。
盗用疑惑は7月27日、リエージュ劇場ロゴ制作者のオリビエ・ドビ氏がFacebookページで示唆。その後、IOC(国際オリンピック委員会)を相手に使用差し止めの訴えを地元裁判所で起こしており、9月には初回裁判が行われる。
組織委と佐野氏は7月末から8月にかけ、「盗用疑惑は事実無根」であるとして、制作意図や審査過程などを説明。当初は「公表しない」としていた当初のデザインも公開した。採用案は、商標調査をもとに少なくとも2回の修正を施している。
新たなエンブレムの決定時期、および審査スケジュールは現時点では決まっていないが、できる限り早期の決定に向けて動くとしている。