—他にお気に入りの店はありますか。
「アッシュ・ペー・フランス」という、フランスをはじめ世界中からのインポートアクセサリーを取り扱うセレクトショップがありますが、その会社がルミネ新宿店に出店しているroomsSHOPです。roomsというファッションの合同展示会のショップ版なのですが、若手デザイナーの作品をお試しで置いて、お客さんの反応を見るという、公開審査のようなことをお店でしてしまっています。フレッシュな才能を発信していこうとするパワーに溢れていて、とても好きな店です。
私は仕事柄、現代美術のアーティストのアトリエやギャラリーでの個展などに足を運んで、新しいものがどのように生まれようとしているのかアンテナを張るようにしていますし、各分野に渡ってそういうことに興味があります。いまご紹介したroomsSHOPや伊勢丹のTOKYO解放区は、大手の資本の枠組みの中ではありますが、買い手が「新しく生まれようとするものに出あった」というそれぞれの物語を作ることができますよね。そうした仕掛けは今後も広がっていくのではないかと思います。
—「山口小夜子 未来を着る人」の反響はいかがでしたか。
お陰さまでたくさんの方に足を運んでいただきました。あの企画は、小夜子さんの7回忌のとき、私と同年代の作家たちと話しながら、「彼女が成したことの重要性が世の中の記憶から薄れていくことに、少しでも抵抗するために展覧会をやろう」と、割と個人的な思いから始まったものです。実際に場を作ってみると、いまの時代に山口小夜子を取り上げる重要性に反応してくださる方が多く、時代の必然的な要請で作られたものだったのだと改めて感じました。
現代美術というと、敷居が高いと思われる方も多いと思います。けれどもこの展覧会は、大上段に構えた「美術」ではなく、山口小夜子という存在自体を体感してもらいつつ、「表現」という人間の本質的な欲求に訴えるものを目指しました。実際にメーキャップやネイル、アクセサリー、ラインアプリなど、小さなことでも何か表現したいという人たちを引きつけた感があります。