およそ3年でたどり着いた「コミュニティ」という一つの解
これまでの出版界のビジネスモデルが通用しなくなっている–それは、縮小を続ける国内の出版市場のデータが物語るだけでなく、相次ぐ雑誌の廃刊や出版社をはじめとするプレイヤーの廃業などからも、その苦境ぶりがうかがえる。
「日本の出版界の仕組みは、たくさんの人が書店で本を買うことを前提に成り立っていたのですが、その前提がいま、すごい勢いで崩壊しつつある」。
そう語る佐渡島庸平氏は、2012年10月に講談社を退職し、作家エージェント会社コルクを設立した。出版社や媒体の都合に左右されず、作家の才能を最大限発揮させ、作品の価値をより高めるべく、長期的なスパンで作家とタッグを組む体制を敷くためだ。原稿料や印税から一定のエージェントフィーを取るコルクのビジネスモデルは、破綻しつつある出版界の仕組みをも変えようとしている。
コルクの設立からおよそ3年が経とうとしている現在、設立当初にイメージしていたことを具現化できているかという問いに対し、「どちらかといえば当初イメージしていなかったことをやっています」と佐渡島氏は答える。この3年、出版社にいた頃には接点のなかったベンチャー経営者などと多く会うようになった。時代の先を見据えるリーダーたちが考えていたのは、ITによって世の中がどう変わるかということ。あらゆる業界がITに翻弄されており、それは出版界も例外ではないと感じた。
「だから、作家もITの世界に飛び込んでいかないとダメだと思うし、そのサポートをすることこそ、僕らの仕事です。従来の出版に代わる収益モデルは世界を見渡しても見つかっていないし、それは世界で同時に挑戦を迫られているということ。これまでは良い本を出せば売れましたが、いまはもうそういう時代ではない。これからの時代に重要なのは、どうやってネット上にコミュニティをつくるかだと思うようになったんです」。
“コミュニティ”―佐渡島氏はその言葉を、これからの編集を考える上でのキーワードに挙げる。
“作品外で作品を楽しんでもらう仕組みをつくることが、これからのモデルとして必要だと考えている。”
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