重要なのは、コミュニティの熱量を上げること
これまでは所属する会社や出身学校、住んでいる場所など、日頃接点の多い人たちを中心にコミュニティが形成されてきた。だが当然のことながら、音楽や映画、スポーツなどの趣味や嗜好が合う人々が集うコミュニティの方が、居心地は良いはず。その原理を活かし、佐渡島氏が行っているのが、作家とファンによるコミュニティをつくることだ。
「ファンにとってはコミュニティが自らの居場所となり、そこではより大きな楽しみを見出すために次第にリッチなものを求めるようになります。それは、現代の購買の基準になっているのが、心理的に満足できるかどうかだから。熱量が上がるほど、自然とお金を払わないと得られないようなものが求められるので、満足度に応じて課金をしていくシステムをつくっています」。
エージェント契約を結ぶ大ヒット漫画『宇宙兄弟』の小山宙哉氏は、LINEでは約9万人と、Twitterでは約4万人のユーザーとつながるコミュニティを形成している。『宇宙兄弟』が掲載されている週刊漫画雑誌『モーニング』や単行本では一方通行だったコミュニケーションも、コミュニティではインタラクティブなコミュニケーションが生まれる。さらに、メルマガでも何かを呼びかけると、1万4000人の読者のうち、およそ10%が反応をするのだという。
「出版界でも、よくマーケティングが重要だと言われますが、僕はマーケティングをして本を売るということをもはや目標にしていません」と佐渡島氏は語る。マーケティングはコミュニティに人を集める手法の一つであり、重要なのは、コミュニティ内でいかにコミュニケーションを活性化させ、熱量を上げられるかだと考えているからだ。
「つまり、作品外のところで作品を楽しんでもらう仕組みをつくることが、これからのモデルとして必要なのだと考えています」。
「これからの編集者のあり方は、コミュニティマネージャーになること」など、この続きは、9月16日に発売される『編集会議』2015年秋号でご覧ください。
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