シェアリングエコノミーの台頭
次々と新しい設備投資を行い、社会全体のインフラを進化させ続けてきた高度経済成長期を経て、日本をはじめとした成熟化し、加えて人口も減少していく先進国において近年、注目されているのが「シェアリングエコノミー」だ。
モノやサービスなどの共有により、成り立つ経済の仕組みのことで、時価総額5兆円と言われる、タクシー配車サービスの「Uber」、時価総額2兆円とも言われる空き室マッチングサービスの「Airbnb」などが、その代表格だ。UberもAirbnbもタクシーや部屋・物件の非稼働時間に着目したビジネスモデル。いずれも、自社でタクシーや宿泊施設といったインフラを所有しているわけではなく、あくまで余剰となり、稼働していない「時間」に着目し、オンラインで利用希望者とのマッチングを促している点が特徴だ。
巻頭レポートでは、企業が持つ店舗や商品、販売チャネルなどの既存のインフラにデジタルテクノロジーを掛け合わせることで、今の時代に合った新しい価値が生み出せるのではないか、をテーマにしている。今、次々と登場しているシェアリングエコノミーの寵児であるベンチャー企業の戦略、戦術に、実は歴史ある企業にも、取り入れられるエッセンスがあるのではないだろうか。
取り入れられると考えられるポイントの一つが、テクノロジーの活用によるサービス改善。そもそもシェアリングのビジネスモデルが成立する土台にあるのが、インターネットの浸透とテクノロジーの進化にあり、前述のUberも徹底的なデータ分析とテクノロジーを活用したサービス提供アプリの改善が、市場から評価を受けている。
現在、Uber Japanの社長を務める髙橋正巳氏は前職はソニーで液晶テレビのブランド「ブラビア」のマーケティングやブランディング担当などを歴任していたが、Uberがデータドリブンな企業であることに魅力を感じ、参加を決めたと話している。「ソニーでマーケターをしていた頃は、テレビを何台生産し、何台売れたかというデータしかなかったが、Uberアプリの場合は、あらゆるデータを取得できる。
どこに需要があり、そこで何が起こっているのか–アプリを開いた際、周りにハイヤーはいたのか、一番近いハイヤーはどのくらい離れていて、そこで何割の人が配車をかけたのか、その際にドライバーが応答できたかどうか–を知ることができる。マーケターとしては、単純にものを売るだけでなく、実際にどういう使われ方をしているのかが知りたい。それを知ることで、本当の意味での仮説の検証ができる」と話している(月刊「宣伝会議」2015年7月号より)。
印刷機の非稼働時間に着目
国内でもシェアリングエコノミーの寵児と言えるような企業が注目をされている。ネット印刷通販サイトのラクスルだ。ラクスルは全国にある印刷会社をネットワーク化。さらに各社工場の非稼働時間を活用し、個店を中心とする中小規模の企業を対象に、低価格で印刷物を提供している。
今年2月には、総額40億円の資金調達を実現するなど、そのビジネスモデルが注目を集めてきた。2014年7月からはテレビCMの放映も始め、会員も増加。現在、利用者は10万アカウントを超える。
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