ランジェリーショップ×デジタルサイネージ=買い物体験の向上―ベリグリ「Ravijour」

『100万社のマーケティング』第4号の巻頭レポート「社内の資産×デジタルで新たな価値をつくる。」では、商品や技術、店舗、人的サービス、キャラクターといった、企業の既存資産にデジタルの手法・考え方を組み合わせることで、新しい価値づくりに成功している国内外の企業の事例を紹介しています。

達中 靖之(たつなか・やすゆき)
ベリグリ 代表取締役CEO

10代の頃よりファッションに携わり、DIESELにてインポート経験を積んだ後、渋谷109全盛期より、EGOISTの本部長として日本のガールズマーケットを支える。2004年、Ravijour(ラヴィジュール)を設立。

店舗スペースの限界をデジタル体験で補完する

カタログ通販発ブランドの資産である、豊富な写真素材を最大限生かした。Ravijourはシーズン毎のコレクションの計画生産体制のため、商品データの紐づけ作業も、煩雑にはならないという。

女性ランジェリーブランドの「Ravijour(ラヴィジュール)」は、旗艦店である東京・新宿のルミネエスト新宿店に、来店客の買い物体験の質を向上する仕掛けとして「デジタルショーウィンドウシステム」を導入している。ランジェリーが陳列されたラックの後ろに、ずらりと並ぶデジタルサイネージ——来店客が商品を手に取ると、手元の商品と色違いのランジェリーを身に付けたモデルのビジュアルが目の前のサイネージに次々と映し出される。サイネージは、ウルトラテクノロジスト集団の「チームラボ」が開発した「インタラクティブハンガー」と連動しており、ハンガーに掛かった各商品に予め紐づけられた商品群が表示される仕組みになっている。

「×デジタル」の店舗づくりに至ったきっかけは、ルミネエスト新宿館内での店舗の移設。これまで4階にあった店舗が地下1階に移るのに伴い、床面積が2分の1近くに縮小されたのだ。

「もともと20坪以上あった売り場は、10坪とかなり手狭になりました。同店舗は、全国11店舗のなかでも圧倒的な集客力を誇る、ブランドの重要拠点。低層階は高層階よりも集客が望めるとはいえ、ここまで店舗面積が縮小すると、お客さまの買い物体験を損ないかねません。ゆったりと快適な買い物環境が損われるだけでなく、商品陳列量が大幅に減少することで、お客さまの購買意欲の低下や、販売機会損失につながる恐れもありました」と、Ravijourの運営会社・ベリグリの達中靖之社長は当時を振り返る。

通常は一つの品番に対して各サイズ、とくにメイン品番は全サイズを陳列するのが当たり前のランジェリーショップ。店頭販売戦略において、陳列量は、売上を大きく左右する最も重要な要素の一つだ。そこで達中社長は、デジタルの力を活用し、スペース縮小によって減る陳列量を補うとともに、来店客に楽しんでもらえる新しい仕掛けをつくろうと考えた。

自社の既存資産を活用

全国で最も集客力のある店舗ながら、売り場スペースの縮小を余儀なくされた新宿ルミネエスト店。デジタルの力で、店舗を物理的な制約から解放した。

とは言え、移設後の店内演出は、“デジタルありき”で考えたものではないという。

「買い物体験において、デジタルが当たり前の存在になっていくことは、かねてから感じていました。ただ僕らは、あくまでアパレル企業。あらゆる取り組みにおいて、商品をより良く見せること、ショッピングを楽しくすることが第一義です。デジタルの活用が第1の目的になることはありません」と達中社長。

サイネージに写し出されるビジュアルの豊富さは、カタログ通販発のブランドならでは。そのブランド資産の活用シーンを、従来のカタログやECサイト、広告などに加え、店舗にも広げた形だ。

「カタログよりも実物大に近いサイズで多様なアイテムを見ることができ、着用イメージが湧きやすい。店舗スタッフが、カタログをめくってカラーバリエーションを紹介する必要がなくなったことで、スムーズな接客の実現にもつながりました」。

デジタル店舗化による直接の効果は、具体的な数値としては見えていないが、懸念していた買い物体験の毀損を防いだことで、ルミネエスト新宿店は旗艦店としての圧倒的な集客と売上を維持し続けることができているという。

「続きは100万社第4号本誌をご覧ください」


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