組み飴技術×EC=コミュニケーションツールとしての飴―ナカムラ「まいあめ工房」

『100万社のマーケティング』第4号の巻頭レポート「社内の資産×デジタルで新たな価値をつくる。」では、商品や技術、店舗、人的サービス、キャラクターといった、企業の既存資産にデジタルの手法・考え方を組み合わせることで、新しい価値づくりに成功している国内外の企業の事例を紹介しています。

中村 貴男(なかむら・たかお)
ナカムラ 代表取締役

全国有数の菓子問屋街、名古屋市西区に生まれ、駄菓子に囲まれて育った。経営の引き継ぎを契機に、徹底した市場分析をもとに、菓子問屋としての新たな道を切り拓く。2007年に飴のオーダーメイドサイト「まいあめ工房」を立ち上げ。

コミュニケーションツールとしての飴の市場を新たに開拓

2007年に立ち上げた、飴のオーダーメイドサイト。2013年までに3000社・5000点以上のオリジナルキャンディをつくった。

切っても切っても、同じ絵柄が出てくる「組み飴(くみあめ)」。これをオリジナルデザインでオーダーできるWebサイトが「まいあめ工房」だ。ユーザーが用意した原画をもとに、職人が一釡ずつ手作業で絵柄を組み上げる。直径20ミリの小さなスペースに描かれるイラストは、原画そのままというわけにはいかないが、微妙な歪みや誤差が手づくり飴ならではの魅力として人気を得ている。

販促・PRツールやノベルティ、記念品など、法人から個人まで幅広い用途で利用されており、これまでに制作したオリジナルキャンディは、法人のべ5094社・7214点、学校関係902校・1574点、個人151人・214点。リピート率も約42%と非常に高い。「1963年創業の当社は、先代の時代は菓子問屋でした。現在も、飴づくり自体は外部に委託しており、菓子・食品・飲料の企画販売、卸売りを手掛けています。『まいあめ工房』は当社の一事業として2007年にスタートしました」と、運営会社・ナカムラの中村貴男社長は話す。

飴やキャンディを買う場所を尋ねれば、ほとんどの人がスーパーマーケットかコンビニエンスストアと答えるだろう。これらの大型流通で商品を取り扱ってもらうには、相応の生産量と、注文に即時対応するデリバリー能力が不可欠。規模の小さなメーカーにとっては参入ハードルが高いのが実情だ。

オリジナルデザインの組み飴の例。直径20ミリという限られたスペースに、イラストやメッセージを描き出す。

「1980年代以降、いわゆる“まちのお菓子屋さん”が減ってきたことで、我々のような手づくり飴のメーカーは、販路を縮小せざるを得ない状況に。組み飴の事業者は減り続け、現在は全国に30社ほどしかありません。飴づくり業界が縮小し、素晴らしい技術が次世代に受け継がれていかないのは、業界にとって大きな問題だと思いました。とは言え、既存の販路だけで、さらなる成長を目指すのは難しいため、新たな販路を開拓する必要がありました」。

中村氏が初めて菓子をインターネットで販売したのは、1997年のこと。パソコン通信の時代から趣味でPCに触れる機会が多かった同氏は、仕事の傍ら、メッセージ入りの小さなハート型チョコレートを販売するサイトを立ち上げ、40日間限定で運用を行った。

「アクセス数やコンバージョン率など、ネットでの商品販売データを取りたかったのです。期間中のアクセス数は4万PV、売上も予想以上の結果でした。Webサイトをつくって売れば、商品は動く―ネット販売に市場性があることを確認することができました。とは言え、当時はまだ集客方法が確立されていなかったため、事業化はひとまず見送り。事業化に向けた動きが加速したのは、2002年にGoogle AdWordsが登場してからでした」(中村氏)。

そして2007年、職人の技を次世代に伝え、組み飴づくりを事業として存続させていくために、ネットを介した組み飴のオーダーメイド販売に踏み切った。当時、ネット上では「金太郎飴」が月間1万件以上検索されており、2次検索ワードに「金額」「オーダー」が頻繁に出てくることも分かっていた。

オリジナルキャンディのネット販売には、7000万円~1億円程度の市場があると見込んでの参入だった。「すでに先行する事業者はありましたが、飴づくりの技術面で当社に分があると確信していました。1億円という市場規模は、大手が参入してくるリスクも低いため、業界1位を十分に狙えるとも思いました」。

「続きは100万社第4号本誌をご覧ください」


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