あるイベントスタッフ募集の、非常識な報酬はいくらだったか?
ここでクイズです。あるお店がリアルイベントをやることになりました。イベントスタッフを募集するにあたり、一日いくらの報酬で求人を出したでしょうか?
正解は……「『スタッフになれる権』を1万円で売った」です。イベントで働ける権利を1万円で売ったところ、なんと15人の方が買ってくれました。これは京都の「ネコ市ネコ座」というイベントのスタッフになれる権とIDカード、そしてオリジナルTシャツ2枚をセットにした商品として販売されたものです。
「2022年までにネコの殺処分をなくす」ことをビジョンに掲げ、殺処分される手前の猫を引き取って保護猫カフェを経営しつつ、里親募集をしている「ネコリパブリック」というお店があります。この1年弱で4回、クラウドファンディングのプロジェクトを開催し、集まった金額を合計すると1000万円を超えています。プロジェクトをやればやるほど、新しい支援者が増えていくというサイクルが確立してきています。しかもそれは単なる新規客という意味合いではなく、「ビジョンへの共感者」であり「プロジェクトを共に成し遂げた同志」とでもいうべき関係性の人たちであることが特長です。
次は、チャリティの事例を紹介します。CSR活動としてチャリティをやる企業は多いですが、長く続かず打ち切られることが多くあります。 そんな中、「がんばらないでアフリカに学校を建てたスイーツ店」があります。「バニラビーンズ」では、アフリカのカカオ農園で子どもたちが過酷な労働にさらされているというドキュメント番組を観たことをきっかけにチャリティイベントを始めました。製造過程で出てしまう割れ・欠け品のチョコを毎週オークションにかけ、その売り上げの9割をプロジェクト資金として積み立てることで、学校ひとつ分、約500万円のお金を集めました。
ネコリパブリックさん、バニラビーンズさんの事例に共通しているのが、「モノではなく、参加価値を売っている」という点です。ネコの殺処分をなくすためのプロジェクトにスタッフの一員として参加できる体験や、「私が一枚かんでいるアフリカの学校がついに建ちました!」とSNSへ投稿したくなるような体験を提供しているわけです。これはただ単に「Tシャツやチョコを買って手元に届いた」という買い物体験とはまったく別物の価値です。従来のように「モノ自体に価値がある」という発想をしていると、同種同類の商品があふれるなかでは、お客さんに「どこのお店でも買えるのなら一番大手で買うのが安心だな」と思われるようになります。つまり、模倣による同質化競争は、業界のナンバーワン企業が強くなるだけなのです。
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