ビジネスをスケールさせられる人材がもっと必要だ
中村:お2人は新規プロジェクトを始める時、どういう準備が必要だと思いますか? 小さなエージェンシーなら「面白そうだからやろうぜ!」でできるけれど。
野添:そういう感じって大事なんじゃないでしょうか。スタートアップが手掛けるIoTは、これまで効率化のためのものが多かったと思うんです。ごみ箱にセンサーをつけることで中身の量を把握できて、無駄な回収を減らせます、とか。それも必要ですが、僕らは人がワクワクしたり楽しい気持ちになったりするIoTを作ることが大事なんじゃないかと思っています。ただし、それをビジネススケールできる人材が広告界にいるのか。それが大きな問題ですね。
中村:PARTYでは、「OMOTE 3D SHASHIN KAN」(3Dプリンタを使った立体フィギュア制作サービス)を発表して、あっという間に世界中にパクられたという過去がありまして。意匠のことを全然考えていなかったんです。広告の人間は、その辺がすごく甘いというか。
野添:アイデアをスケールさせて、もうかる仕組みを作れる人材が必要ですよね。
朴:そうですね。既存の枠の中でクリエイティブを競うのも楽しいのですが、隙あらば、そのコンテンツフォーマット自体を新しくするようなことをやってみたいですね。同時に数百万人参加とか、家でもどこでも参加できるネット時代の恒例のお祭りのようなものを作ってみたいです。
中村:SIXが今後やっていきたいことは何ですか?
野添:音楽の次はファッションの分野でやってみたいですね。もうひとつは、音楽やスポーツなど、ライブイベントの楽しみ方を追求してみたい。そうやって「カルチャーをアップデートする」視点で考えていけば、可能性が広がっていくんじゃないかと思います。
朴:スポーツ中継は、届ける側にも見る側にもアップデートの余地がたくさんありますよね。
野添:まさに研究が進んでいる分野ですよね。このまま発展すれば、東京オリンピックでは世界一深い中継ができるようになるかもしれない。
朴:今はほぼ全員が高性能ネット端末を持っている時代です。IoTというより、IoE(Internet of Everything)、つまりコトのインターネット化というような形で、自分がしたいことが瞬時に伝わり、それに対応するサービスがすぐに提供される、という方向に時代は進んでいくと思っています。
中村:ちなみにお2人は、これからどんな人材が欲しいですか?
朴:有無を言わさず欲しいのはエンジニアやプロデューサー。プロトタイプを作れる人材が欲しいですね。
中村:プロトタイプを作れる人間はPARTYでも探しています。ただ、人数が少ないとクライアントワーク優先になってしまうのが悩みです。組織を分けるしかないかもしれないですね。
野添:アイデアはいっぱいある。でも、プロトタイピングを進めるられる人間も、ビジネスを進められる人間も全然足りない。それが僕たちが抱えているジレンマですね。
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朴 正義(ぼく・まさよし)
バスキュール 代表取締役/クリエイティブディレクター。2000 年にバスキュールを設立 後、15 年にわたりトヨタ、コカ・コーラ、ユニリーバ、ナイキ、ソニー、パナソニック、ポケモンなど、 数多くの企業やブランドのデジタルプロモーションの企画ディレクションを担当。これまでに担当した100 以上のプロジェクトで、カンヌ、クリオ、ワンショー、ADC、文化庁メディア芸術祭など、国内外のクリエイティブ賞を受賞。ここ数年は、テレビ×ネットという領域で多くのチャレンジを行うとともに、従来の枠を飛び越える次世代クリエーターの育成活動であるBAPAに注力している。
野添剛士(のぞえ・たけし)
SIX 代表取締役/クリエイティブディレクター。2000 年博報堂入社。デジタル関連部門、マーケットデザイン部門で経験を積んだ後、クリエイティブへ。2013 年に SIX を設立し、代表取締役社長に就任。2013年カンヌ審査員。主な仕事は「SPACE BALLOON PROJECT」「JIM BEAM」「adidas サッカーW 杯日本代表」など。受賞歴は、 2011 年度クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、文化庁メディア芸術祭グランプリ、カンヌ、ACC マーケティングエフェクティブネス部門グランプリ、SXSW での受賞ほか。現在は、トヨタ、サントリー、グーグルとともにマス・デジタルを横断したキャンペーンを行うとともに、リリックスピーカーなどによる商品開発を通した「コトづくり」にも注力している。