NEW STARS 銅賞
「WHY ARE YOU IN SEOUL?」
大瀧 篤(電通 コピーライター)
下村雄飛(電通 アートディレクター)
毎年観光客数が増え続けているソウル。「WHY ARE YOU IN SEOUL?」は、ソウルを訪れた外国人観光客に「何でソウルなの?」と問いかけることで、釜山にも足を運んでもらおうとするアイデア。(1)釜山とは対照的に、ソウルの外国人観光客は年々増加していること、(2)ソウルの人口密度は釜山の4倍もあることの2点に注目し、南大門市場やロッテワールド、Nソウルタワーといった、ソウルでも特に混み合う観光スポットに、「釜山なら、4倍快適だよ」「釜山なら、4倍遊べるのに」というメッセージと、ビーチや自然、ショッピングモールといった釜山の魅力的な場所の写真を組み合わせたポスターを掲出する。
大瀧さんコメント
観光客には「せっかくの旅行先、混雑はできるだけ避けたい」という気持ちがあるはず。そこに刺さるメッセージに具体的な数字を加えることで説得力を強め、他チームと差別化を図る作戦でした。(1)オリエンに振り回されて、理屈っぽくならないこと、(2)小さくまとまらないこと、(3)シンプルに考えること、そして(4)「何を言うか」から他のチームと差別化することを大切にしましたが、実際に参加してみて、国は違っても、考えることは似るものだなと思いました。 表現は違えど、メッセージが被っている案は5~6案あったと思います。実務においても、アイデアを形にするスピードにはこだわったほうがいいなと思いました。国内で同じアプローチをしている人がいなくても、世界ではとっくに考えて動き出している人がいるはずですから。アプローチが同じでも勝てるように、表現の独自性・クオリティの高さにこだわっていきたいとも思うようになりました。
ここ1年間で、「世界と戦ってみたい」という思いが強まっています。会社から派遣されてスパイクスアジア2014に参加したことで自分の中で火がついて、その後、自費でアドフェスト、カンヌライオンズ、そして今回のAD STARSに参加するに至りました。私が担当した仕事の中に、アドフェスト2015でブロンズをいただいたものがあったのですが、カンヌでもアドスターズでも受賞は果たせませんでした。 もっともっと世界に通用する、突き抜けたアイデアを考える。そして、それを圧倒的なクオリティで形にできるクリエイティブを目指して、精進したいと思います。
下村さんコメント
いろいろとアイデアを練っていく中で、難しく考え始めてしまったものを、いかにもう一度アナライズして、シンプルにブラッシュアップしていくか。そこに、最も苦労しました。今回参加してみて、日本で広告を制作しているときは、アイデアを形にする際、言語的な表現に頼りがちだったことに気が付きました。海外で制作するにあたり「誰にでも分かってもらえること」がより重要な要素となってくると、論理的・左脳的な表現より、直観的・右脳的な表現の比重が大きくなります。今までのやり方は一度どこかに置いておいて、アイデアの構築方法から変えていく必要があったのです。より直感的に飲み込みやすいアイデアを、いかに生み出せるか——それが今後、グローバル化する社会で必要になってくるのではと思いました。
また、世界の若手クリエイターと触れ合って感じたことは、「英語力」はあまり武器にならないかもしれないということ。韓国や中国の若手クリエイターは英語を使える人が多く、英語のコピーワークも巧みでした。むしろ、近年のグローバルコミュニケーションは象形文字化している部分があるので、英語だけではなく、視覚的なシンボルを使うコミュニケーションを、より深く学ぶことが重要なのではと感じました。