先日、昼休みに神保町を歩いていたら、知り合いの出版営業氏にばったり会った。しばらく立ち話していたら、今度は知り合いの書店員氏が通りがかり、3人でしばし、すずらん通りの真ん中で立ち話をした。
このご時世、出版業界人が集まって話をするとなれば、楽しい話題になるわけもない。売上が…数字が…云々と、どうしても暗い話になる。最初は3人でため息をついていたのが、あれこれ話しているうちに、出版営業のやり方、注文や配本の部数、このような業界情報を交換・共有できる場の必要性、などなど、だんだん話にも熱が入ってきた。すずらん通りの真ん中で、である(笑)。
ふだん出版や書店をテーマにしたトークイベントを企画主催している身としては、立ち話にしておくのはもったいないぐらいで、この話、どこかでイベントにできないかな、などと途中から考えていたほどだ。それぐらい、偶然出会った知り合い同士の、短時間の立ち話に、おもしろそうなアイデアがたくさん含まれていたのである。
そういえば、つい最近もこれと似たような場に居合わせた。『編集会議』2015秋号に掲載される書店員座談会である。座談会の構成案を作成し、当日の司会進行役を担当した。座談会に参加したのは現役の書店員4名。三省堂書店(神保町)の内田剛さん、ブックス ルーエ(吉祥寺)の花本武さん、書原(阿佐ヶ谷)の上村智士さん、増田書店(国立)の篠田宏昭さん。
編集部から与えられたテーマは「本が売れない時代の書店員たちの本音」という、ある意味、身も蓋もないもの。「本音」といっても業界の内輪話や愚痴を言い合ってもしかたない。そこは、各店各氏が、この「本が売れない時代」をどんなふうにとらえているのか、どのように向き合っているのか、どんな対策をとっているのか、どんなふうにこれから切り抜けていこうとしているのか。それらをぜひとも聞き出したい。そしてそれらを、同じように悩み、日々闘っているこの世界の仲間たちに届けたい。そんな思いで、座談会の構成を練り、当日に臨んだのだった。
座談会では、イベントやフェア、スタッフ教育・人材育成、POP・フリーペーパー・SNSの活用、地域との関わり、などなど、「本が売れない時代の書店員たちの本音」が次々に飛び出し、話題は尽きない。時間内に収めるのが困難だったほどで、後々、原稿にまとめる段階で、圧縮する作業に大いに苦労する羽目になった。それぐらい、4人の書店員全員に「本が売れない時代」に本を売ることについてのアイデアや思いがあふれんばかりにあったのだ。