本が売れない時代の本屋は何をすべきか

三省堂書店の内田さんが、冒頭、自分の書店員としてのキャリアになぞらえ、この24年間を次のように三分割してまとめてくれた。


最初の8年=「何もしないで売れる時代」

次の8年=「工夫しないと売れない時代」

直近の8年=「何をしても売れない時代」

 

なるほどなあ、とうなずかれる方も多いだろう。直近の「何をしても売れない」は、あきらめからそのように定義したものではない。これは、「今までのやりかたでは」ということ。書店にとって、いまたしかに大変に厳しい時代なのだろうが、ただ、書店員は手をこまねいているわけではないのだ。

この座談会には、たくさんのヒントがつまっていると思う。ただ、新人研修マニュアルのような話をしているわけではないから、これを読んだからといって、明日からすぐ、現場に応用できるような何かがあるわけではないかもしれない。でも、いま大事なのは、まだこんなにやれることがあるのだ、という思いを本に関わる我々が共有することではないかと思う。その意味では、このような座談会を行い、それを文章のかたちで届けることはとても大事なことだし、さらに言えば、このような座談会を、直接、多くの人に聞いてもらう機会をつくることも、同様か、それ以上に大事なことなのだろうと思う。

「この座談会には、たくさんのヒントがつまっている」と書いたが、もしかしたら、物足りなく感じる方もいるかもしれない。それでもいいと思う。そのようなときは、ぜひ、自分ならどうするかを考えてみていただきたい。そのようなきっかけになったとしたら、この座談会にはそれだけでも充分に意味があると思うから。そのときは、独りで考えるのもいいけれど、この座談会のように、店や、チェーンや、担当や、立場が異なる人と意見を交換してみるのもいいのではないかと思う。

司会もレジメも掲載誌もなくていい。神保町でばったり会った知り合いとの立ち話から、企画やイベントのアイデアが生まれることだってあるのだから。

※座談会の内容は、『編集会議』2015年秋号(9/16発売)に掲載されます。

空犬太郎
編集者・ライター

書店テーマのブログ「空犬通信」やトークイベントを主催。著書に『本屋図鑑』『本屋会議』(ともに共著、夏葉社)、『本屋はおもしろい!!』『子どもと読みたい絵本200』(ともに共著、洋泉社)がある。

edit-spinout

『編集会議』2015年秋号
9月16日発売 定価1300円
事前予約もいただけます。


特集「新時代に求められる“編集2.0”」
「良いものをつくれば売れる(読まれる)」という時代が終わり、読者・ユーザーに「どう届けるか」という“コミュニケーションを編集する力”が問われるなか、編集にはどのようなアップデートが求められているのか。編集を再定義しようとする考え方や取り組みを通じて、これからの編集のあり方について考える。

・KADOKAWA×宝島社×LINE「新時代の編集者の採用基準」
・オンラインサロンに見る、体験をサービスとして設計する編集力
・若手編集者が語る1.0→2.0の間

特集「コンテンツマーケティングを生かすオウンドメディア戦略」
—100社に聞く オウンドメディア運用の実態
—あのオウンドメディアの“中の人"の運用術 他

特集「本の最前線はいま 書店会議」
—出版界の勢力関係を解き明かす 出版界カオスマップ

連載「書く仕事で生きていく」
—スポーツライター 木崎伸也「本田圭佑の取材秘話」他

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