他社と同じコンセプトで「プレスイベント」を行った場合
例えば、先行する企業が20代女性にターゲットを絞った「アイスクリーム×ファッション」というコンセプトの消費者イベント(例えばファッションショー×試食イベント)を過去に行ったとする。
このコンセプトをそのままマネしたフォロワー企業が、同じような20代女性をターゲットとした「ファッションショー×試食会」を実施したとする。この場合、フォロワー企業のイベント企画は、仮に可視化されるクリエイティブや出演者が異なったとしても、「パクり」だとして非難される可能性が出てくると私は考える。
話を進める。
では、同様に、フォロワー企業が、先行企業のテレビCMと同じタレントを起用して、同じテレビCM展開を行った場合はどうか?私はこれはかなりの高い確率で「パクり」だと言われ、ネット上で炎上したり非難されたりすると考える。もっともタレントの所属事務所や広告会社などもこの辺は分かっているので、競合他社の類似商品のプロモーションに同じタレントを起用することは、まずない(契約上の法的な拘束の有無も含め)。
一方で、先行企業が「期間限定!いま新商品アイスクリームを買って、応募すると抽選で1000名様を◯◯にご招待」というキャンペーンを実施していたとする。このキャンペーンのフレーム(コンセプト)は、どこにでもある懸賞キャンペーンだ。仮にフォロワー企業がこれをマネしたとしても問題にはならないだろう。
しかし、この懸賞キャンペーンの賞品である「◯◯」が、先行企業のキャンペーンと同じ賞品だった場合(例えば同じ観光地へのご招待キャンペーン)だった場合は、キャンペーン上の「ディテイル(表現)」が重なることで、恐らく「パクり」だと言われて非難される可能性がかなり高いと私は考える。
こうして具体的に考えていくうちに、だんだんと私の中での「境界線」が見えてきた。
あえて「パクる」と、うっかり「パクる」の違い
そもそも先行する他社を「マネる」つもりはなくとも、自社の置かれた状況や条件のもとで、自社にとって最も合理的な戦略コンセプトを考え出した結果、先行する企業と戦略ベースでのアイデアが類似してしまうことは経験上よくある。
そして、先行する他社の事例を事前に知った場合、「類似するから」という理由で、あえて合理性には劣るが他のコンセプトの企画を採用することもよくある。この場合、商慣習や商倫理(あるいはプライドの問題として)に則り「かぶる」ことは避けたい場合もあれば、後から「後ろ指」を刺されたくない(リスク回避)という場合もある。
その一方で、同じであることが合理的であるのならば、あえて合理性を貫いて「マネる」という選択枝もなくはない。そもそもマーケティング戦略や経営戦略自体がフォロワー戦略をとるのであれば、成功している前例をとことんフォローするという戦略も、善悪の問題ではなく戦略としては当然考えうる。
先生!結局…企画をパクるというのはどういうことですか?
ここで思い切って、私自身の場合に話を置き換えて考えてみる。
PRなどの企画を練る際に、自分自身や他社が行った過去の成功事例を参考にすることは実際には多い(過去の成功事例を研究したり参考にしない方がプロとしてどうかしている・・・)。
例えば、今から15年以上前の話になる。当時、地上波テレビ局で番組宣伝の仕事をしていた。まだ各局が番組ホームページを持つというのは稀だった。ネットを使った番宣というもの自体が完全に定着はしていなかった。
ところが、他局のある番組が「ホームページ(というもの)を開設した」というのを知って、私は自分が担当したドラマでホームページ(というもの)をマネして制作依頼をしてみた。これを「パクり」と言われるのならば、それはしょうがない。「番組ホームページ」という手法の「パクり」になるのだろう。
その時、他局のサイトでは「トップページ」のほか、「あらすじ」「出演者」「スタッフ」といったサイト構成だったと思う。ここに自分なりに知恵を絞って視聴者からの「投稿用フォーマット」のページを付けてもらった。番組開始後、サイト上で出演者から何らかの「お題」を毎週出してもらい、視聴者から「(ネタ)投稿」をしてもらった。50件くらいは回答が来るだろうか?と思っていると、毎週1000件以上の投稿があり驚いた。それでも今考えると少ないが、ネットの力を肌で感じるきっかけになった。
私の当時の行為は「パクり」といえば「パクり」だが、当時としては、一応、自分なりの付加価値(双方向コミュニケーション)は加えたつもりだった。
今では番組サイトの存在は当たり前になり、投稿フォーマットなどの機能も何も珍しくない。そもそも「戦略PR」だとか「CRM」「コンテンツマーケティング」などといった言葉自体が存在しない時代から、似たようなことを違う呼び方で、すでに行っていた人は意外と多い。