実は、これに近い状況を経験した都市がある。ドイツ統合直後の、1991年のベルリンだ。ベルリンの壁の撤去に伴い、いくつかの再開発が動き出す中で、かつての都市文化の象徴だったポツダム広場の敷地が、統合直前に大企業に売却されていたことが明るみになった。不透明な売却は政治スキャンダルとなり、合わせて行われた開発コンペティションにも疑問符がつけられ、マスタープランは白紙に戻さざるをえなくなった。
このときにできたのが、「InfoBOX」(1995)という、都市情報センターである。新しいベルリンがどのように構想され、その中でポツダム広場はどのような場所となるかが、模型と図面パネルで市民に示された。屋上には展望デッキが設けられ、工事の様子も直に見られるようになった。また、建築家や都市計画家によるツアーも計画され、この開発が、いかに未来のベルリンに重要なのか意義を周知する活動も盛んに行われたのである。この建物こそ、世界中の都市情報センターの原型となった建物。ベルリンは、市民置き去りの都市計画への批判を教訓に、誰もがアクセス可能なデリバリーを行い、その後のシビックプライドの醸成へとつなげたのである。
だからこそ、今こそ東京に、この都市情報センターの設置を呼びかけたい。新しいまちがつくられていく高揚感を共有し、一人ひとりの心に定着させていくプロセスが、今ほど求められている時はないからである。
太田浩史さんが登壇されるセミナーが9月30日に開催します。
五輪を控えた東京に、今こそシビックプライドを!
—『シビックプライド2』出版記念セミナー概要
■日程:9月30日(水) 18時15分開場 18時30分スタート
■場所:宣伝会議 8F セミナールーム(東京都港区南青山3丁目11番13号)
※東京メトロ「表参道」駅 A3・A4出口より徒歩3分
【プログラム】
第1部:講演(18時30分~19時)
「フォントで東京のアイデンティティを伝える」
鈴木功 氏(タイププロジェクト株式会社 代表取締役社長)
文字は都市デザインを支える基本要素であり、都市のユニークさを伝える顔。「金シャチフォント」の開発など、人々の都市に対する感性を刺激してきたタイプディレクターの鈴木功氏が登壇。9月に発表したばかりの「東京シティフォント」の取組み、東京さらには江戸のアイデンティティについて、シティフォントの視点から語ります。
第2部:パネルディスカッション(19時~20時)、質疑応答・懇親(~20時半)
「東京とシビックプライド」
パネラー:
太田浩史氏(建築家・株式会社ヌーブ代表取締役/シビックプライド研究会)、
鈴木功 氏(タイププロジェクト株式会社 代表取締役社長)
モデレーター:
伊藤香織 氏(東京理科大学 理工学部建築学科教授、シビックプライド研究会代表)
東京は大好き。でも自分が東京の未来を築いている、という実感はほぼない-。この距離感は一体何なのか。2020年の五輪開催を控える東京こそ、シビックプライドを必要としていないか。東京とシビックプライドの現状・課題、そして未来に向け、まちがつくられていく高揚感を共有するためにどんな施策、視点が必要なのかを語り合います。
■参加費:お一人様3000円(『シビックプライド2【国内編】』1冊付き)
〔割引〕書籍をご持参いただいた方は参加費1000円です。
ご参加方法
メールにてお申込ください。
・件名を「シビックプライドセミナー」とし、
ご所属(企業・団体名など)、お名前を記載の上、下記アドレスにお申込みください。
▼メールアドレス
hansoku@sendenkaigi.co.jp
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