動的コマースのために「1パーセントの遊び」を持つ
では、3原則の最後「栄養」について。これは「お客さんや取引先などから『ありがとう』のメッセージをもらえること」だと考えています。これを「魂のごちそう」、略して「たまごち」と呼んでいます。
「卵の黄身 vs. 爪楊枝」の企画では、お客さんから「家族で大盛り上がりしながらやりました!」「こんな楽しい企画、初めて!」といったメッセージがたくさん届きました。そんな「たまごち」が届くと、「次はどう面白がってもらおうか」という原動力になるわけです。
動的コマースで遊んでいるうちに、協力者との出会いが訪れることもあります。
前回も登場した保護猫カフェ「ネコリパブリック(以下、ネコリパ)」さんでは、「ツノオークション」の事例を知って、すぐに「ネコのひげオークション」を始めました。ページに、「ネコのひげケースなるものも世の中にはあるようですよ」と書いておいたところ、そのメーカーさんから「取り組みに感銘を受けました」と、ひげケースが送られてきました。その後、開発者ご本人が東京から岐阜まで会いに来てくれ、意気投合し、「コラボ商品をつくりましょう」という話に展開しました。
最後に「お客さんと遊ぶコツ」をまとめてみます。3つあります。
一つ目が「企画にメッセージがあること」。ネコリパさんは、「2022年2月22日(にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんの日)までにネコの殺処分をゼロにしたい」というビジョンを掲げて活動しています。お客さんは企画に参加して遊んでいるうちに、そうした店のビジョンも知ってくれるようになる。それがなければ、単なる「売れない販促企画」に過ぎないわけです。
二つ目が「自分の強みを活かすこと」。自分にとっては苦にならないことをやります。「大変な仕事だ」と思ってやると、その人に遊んでいる感覚がないのがにじみ出て、お客さんも「一緒に遊びたい」と思ってくれません。「ネコのひげオークション」のページをつくっているときは、「楽しくてしかたがなかった!」そうです。
3つ目のコツは「最初は仲間内でもいい」ということです。ネコのひげオークションはこれまで2回開催されたのですが、最初に落札してくれたのは友人でした。落札額は3000円台です。しかし、2回目はまったく知らないお客さんが8000円台で落札してくれました。最初から大きな成功を目指すよりも、小さく始めて、本気で遊んで面白がっていると「なんか面白そう」とのぞきに来た人が「次は自分も参加してみようかな」と増えていく。それがだんだんと大きなムーブメントになっていくわけです。
「静的コマースから動的コマースに切り替えるのはムリだ」と言われる方がいますが、そういうことではありません。静的コマースの部分、つまりネットショップの自動販売機的な機能は磨き上げつつ、数%でも1%でもよいので「お客さんと遊ぶ」ことにリソースを割いてみると、何か新しい展開が生まれてくるのではないでしょうか。
「楽天」に関連する記事はこちら
新刊『あの会社はなぜ「違い」を生み出し続けられるのか
13のコラボ事例に学ぶ「共創価値のつくり方」 』発売中!