「日々を大切にする買い物のあり方」—フードプロデューサーの視点

美しい食べ方のマナーを推進するほか、飲食店のコンサルティングやメニュー開発の分野でも活躍するフードプロデューサーの小倉朋子氏。自身を“食オタク”と称するほど食べることが好きで、そんな氏の「食への敬意」から生まれた独自のマナーや哲学にはファンも多い。小倉氏からみた現代日本の食のトレンドや、自身の買い物のこだわりについて話を聞いた。

ここでは、『販促会議』2015年10月号に掲載された連載「My Favorites」を転載します。

—これまでも多くのマナー本を出版されてきましたが、なかでも最新刊『世界一美しい食べ方のマナー』が好評です。小倉さんが考える「美しい食べ方」とは、どのようなものですか。

「食べることで幸せや喜びを感じられる食品を提案し続けていけたら最高です」と話す。

世界にはいろいろな食べ物がありますが、どんな料理もまわりへの配慮や思いやりが食べ方に反映されていれば、誰が見ても「美しい」と感じるのではないでしょうか。世界のどの料理にも共通する「美しい食べ方」があるとすれば、それは同席者や料理人、食器、食材の命、歴史や文化などあらゆるものへ感謝し、最大限おいしくいただくことだと思います。

—ご著書には、ご飯や麺類、肉、魚など食材別に美しい食べ方の実例が紹介されていますね。日々の暮らしの中では、美しく食べるのが難しいなと感じるものもあります。例えば「納豆かけご飯」。ご飯と納豆をまぜて食べるとおいしいのですが、どうしても汚く見えてしまいます。

石焼ビビンパはまぜて食べるのが普通なのに、なぜ納豆とご飯をまぜると美しく見えないのか、というアプローチで考えるとヒントが見えてきます。もともと日本食は、まぜないで食べる文化です。「まぜる」という行為は例外なので、無意識のうちに脳が「避けたい」と感じ、汚く思えてしまうのでしょう。また、卵かけご飯の場合は、まぜてもそうは感じません。これは黄と白という色の効果です。一方で納豆は茶色、しかもまぜると粘り気が出て泡立ちます。これは美しくないものを連想させる組み合わせなんです。

どうしても納豆とご飯をまぜて食べたいのであれば、まずはお茶碗の手前の部分だけをまぜて、食べる。

次にまた食べる分だけをまぜる。こうやって手前から少しずつまぜていけば、相手からは白いご飯の面積が多く見えるため、汚くは感じないはずです。いくらおいしい食べ方でも、自分の好きなように食べるのではなく、まわりの人も気持ち良く食べられるよう配慮する。これがやさしさであり、「美しさ」だと思います。

—なるほど。そうやって考えていけば、美しい食べ方に近づけそうですね。

次ページ 「私は物心ついたときから」へ続く

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