フリーのCMディレクターが考える「母親として働くこと」—舟越響子さん インタビュー

【前回記事】「子育てに必要な「会社からのサポート」とは—ライトパブリシティ 国井美果さんインタビューvol.2」はこちら

会社に所属するのではなく、フリーのCMディレクターとして働く舟越響子さん。映像業界における子育ての環境や、CMディレクターとして母親が働くことについて話を聞いた。

いまの方が仕事に集中できている

——子どもが生まれる前はどういった仕事のスタイルでしたか。CMディレクターと言えば、夜も遅いイメージですが。

昼も夜も関係なく、打ち合わせがありました。考えることが仕事でもあるので、夜もずっと1人で考えて、書いてを繰り返すというような生活ですね。

——子どもが生まれたタイミングでそれまで所属していた会社を退職されましたね。

はい、今はCluB_Aという組織に所属しています。CluB_AはAOI Pro.が育てた優秀なCMディレクターを中心に、さまざまなフィールドで活動するクリエイターのマネージメント業務を行っている組織です。ただ、フリーになった理由は出産とは関係無く一人の「舟越響子」としてCMディレクターの仕事がしたくなっていたタイミングにちょうどお誘いをいただいたことです。CluB_Aの事務所には、マネージャーがいるスペースはありますが、それぞれのデスクはないので「出社して仕事をする」ということは基本的にありません。

——フリーになったことで、仕事のスタイルは変わりましたか?

出産後は子どもに生活リズムを合わせることになるので、昼夜の境目なく仕事のことをずっと考える、ということはできなくなりました。ただ、境目なく考えていた時に仕事がはかどっていたかというと実はあやしいです。子どもの事情で時間の区切りがある今の方が、集中して仕事に取り組めていると思います。

今は、夜遅い打ち合わせを無くしてもらったり、進行も夕方くらいに終わるようにスケジュールを組んでもらったり、広告会社の方やプロダクションのプロデューサー、制作部の方まで、仕事に関わる全ての人に協力してもらっています。申し訳なくもありますが、とても感謝しています。CluB_Aのマネージャーにもすごく助けてもらっていて、家庭のわずらわしい事情も受け止めてくれています。私も彼女のことを信頼し、事情は全て伝えるようにしています。「応援しているよ」と口に出して言ってもらうわけではないのですが、日々、感じていますね。

舟越さんの最近のお仕事
ホットペッパービューティーのCM

映像業界で私のようにフリーで母親として働く人はまだ多くないと思いますが、最近増えているようには感じますね。家庭の事情は人それぞれで、どれも似ていないと思うのですが、業界全体で「子どもがいながら働く」ということを受入れる雰囲気になってきているように感じます。

——結婚や出産が仕事にプラスになったことはありますか。

今思えば、独身のときは視野が狭くて、「会社勤めで頑張るぞ」「もっともっと頑張らなきゃ」「いっぱい仕事をしている人が売れている」という思いで、ただ闇雲に頑張っていました。当時頑張っていたこと自体は良い経験になったのですが、結婚や出産を経験すると、いろんな世界があることが見えてきました。

ママ友もできました。みんなそれぞれ通ってきた人生の道が全然違っていて、考え方や経験を少し聞くだけでも、全てが刺激になります。この業界の人たち顔負けのスキルを持っている魅力的なママもいっぱいいて、一緒にいるとすごく楽しいです。私の視野が、子どものお陰で広がっています。そういったことも含めた全部がCM作りに注ぎ込まれているような気がするので、これからも私自身が人間として成長しながら、CMを作り続けていきたいです。

続きは、『しゅふクリ・ママクリ』「どこでも良いわけじゃない」へ続く

舟越 響子(ふなこし・きょうこ))
1978年生まれ。大学卒業後、葵プロモーション(現AOI Pro.)企画演出部にCMディレクターとして入社。その後、同社を退社しCluB_Aに所属、2児を出産する。受賞作に、◯SONY ウォークマン 合唱(第63回 広告電通賞 家庭用機器部門 最優秀賞、2010年 ACCブロンズ、2010年 消費者のためになった広告 TV広告16秒以上 (180秒)銀賞)◯2007年 ADFEST Remarkable5 日本代表 hide-and-seek◯パルコ 2006秋キャンペーン PINK/prism(2008年 Times Asia Pacific Advertising Awards メリット)
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