世の中は“謎”に対する需要であふれていた!「リアル脱出ゲーム」誕生秘話(ゲスト:加藤隆生さん)【前編】

リアル脱出ゲームが生まれるまでには、数々の失敗があった?

澤本:加藤さんは今はこういう不思議なゲームをつくってらっしゃるけど、もともとは印刷会社に勤めてらしたと聞いて。どういう風な経緯をたどって今リアル脱出ゲームをつくっているんでしょう?

加藤:子どもの頃から物語が、本や映画、漫画が好きで、「この物語みたいな生活がやってきたらいいのに」とずっと思っていたんです。でも、印刷会社は物語からは遠い世界で。遠いというか、延々と現実をつきつけられる生活だったんですよ。ノルマもあって。

それを積み上げていくような営業生活を大学卒業後2年ぐらいしていたんですけど、これ、だいぶ遠いなと。それで、物語の世界に入るのはどうしたらいいんだろうと思って、「よし、わかった。バンドだ」と、バンドをつくりました。

一同:

権八:そこ、ちょっと飛躍がありませんか?(笑)

澤本:会社に入る前はバンドをやってなかったんですか?

加藤:細々とはやっていたんですけど、ミュージシャンになったら物語があるだろうと思って。実際、「売れないミュージシャン」という物語の中に、そこから僕は10年間ぐらい潜るんですけど。

一同:爆笑

加藤:それはそれで楽しくて、友達の車で全国をツアーまわったりして。いっぱしのバンドマン的な大きな物語をたどるんですけど、その頃自分たちのバンドの宣伝をするために京都でフリーペーパーをつくったんです。そのフリーペーパーで毎号色々な企画をやっていて、その中の1個が謎解き特集で。フリーペーパーは広告収入でドカンと儲かるみたいなことは決してなくて、印刷代だけ出ればいいやと思ってやっていました。それに付随したイベントをやっていこうと。

澤本:なるほど。

加藤:「フリーペーパーはちょっと豪華なイベントのチラシだと思おう」と、そのときからずっと言っていて。企画に合わせてイベントをずっとやって、そのイベントの入場料でなんとかコツコツまわしていくなかで思いついたのがリアル脱出ゲームです。

一同:へー!

加藤:リアル脱出ゲームに至るまでに20~30個のイベントは外しているんですけどね。

澤本:なるほど。打率1割いってない感じ。

加藤:いかないです(笑)。全然いかないです。

中村:リアル脱出ゲームをやったらボーンときたってことですか?

加藤:そうですね、凄かったです。その前に20回イベントをやって、今日は50人とか、8人しか来なかったとか、そんな体験をしているから、リアル脱出ゲームを思いついてバンと200人の予約が入ったときの熱量が体感できたんですね。キタ!みたいな。これはエライことになるぞと。

中村:今までとは違うと。

加藤:だって、京都で1万部だけ配っているフリーペーパーの告知で200人の予約が殺到するなんてありえないぐらい凄いことなので。これは全国でやったら大変だと。

伝説のイベント「乙女チックポエムナイト」

権八:ちょっと待ってください。フリーペーパーでイベントを告知しながらバンド活動もしていたんですか?

加藤:そうです。

権八:そのイベントのときに演奏したりするということですか?

加藤:それは完全に切り離してましたね。

権八:そうなんだ。リアル脱出ゲームをやるまでは、ちょっと僕もネットで聞きかじった程度ですけど、変わったイベントをやられていましたよね? たとえば、乙女チックポエムナイトとか。

中村:なんですか、それ(笑)?

加藤:乙女チックポエムナイトは京都の我こそは乙女チックだという人達が集まって、みんなの前で自分の乙女チックなポエムを朗読するイベントです。それで、誰が一番乙女チックかを投票で決めるという。

中村:えっ、それお金取るんですか?

加藤:取ります、取ります。毎回チケットが即完売するほど大人気です。なんせ会場が50人しか入らないので。乙女チックなポエムを本当にみんなで読むんだけど、優勝したのが50代男性だったという伝説的なイベントなんですよ!

一同:爆笑

権八:あぁ、素晴らしい。

加藤:本当に素晴らしかった。ものすごい熱気に包まれましたね。

権八:ちなみに、どういうポエムだったんでしたっけ?

加藤:「僕は枯葉を拾い、君の前でガシガシ噛んだ」みたいな。

一同:

権八:乙女チックなのか、それ(笑)。面白い。

加藤:ポエムなので、良し悪しって個々の中にあるわけじゃないですか。それをエンターテインメントのステージの上にボンと乗せて、投票でどれがいいか決めようというトーナメント制にしたというところが面白かったのが1つ。もう1つは、僕らのイベントは有名人を呼んで、その名前でチケットを売るということを一回もしたことがないんですよ。

基本的には素人のお客さんがイベントの企画の構造の中に埋もれながらステージに上がる。そのお客さんがステージに上がって奇跡を起こすのをみんなで括目して待つという。それが僕らのイベントの徹底的な構造でしたね。

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