広告ブロックがマーケターにもたらすのは悪夢か、それとも新しい未来か

広告に頼らないデジタルの未来へ

このような流れによって、広告配信の事業者のみならず広告主の出す広告の方法について、業界的な基準を厳しくしようという動きはもちろんありますが、そのような短期的な見方をするよりも、そもそも「なぜそのような問題が起きるか」という点を考えよう、という本質的な意味合いについて問う意見に自分は共感を覚えます。

つまり、これまでインターネットによる情報サービスは、無料を基本とした、広告によって成立するビジネスモデルであったものが、「常に広告に晒されている」消費者の時代的なニーズにそもそも合ってきていないという観点です。

特にCrystalのようなiOS9対応の広告ブロックアプリをアップルが容認した背景には、モバイルユーザーのインターネット体験が広告によって通信量が増え、読み込み速度の遅さにつながっているという事実です。これは、広告という情報がユーザーにとって有益かどうか明確になる前に、広告そのものがデジタル体験を阻害しているという意味です。特にスマートフォンのようなモバイルデバイスでは、PCに比べてこの点は重要です。

モバイルインターネットをベースにした世界では、ただ単純に広告自体が有益な情報である、という主張より、ユーザーが求めているデジタルにおける情報サービスの設計を新しく企業が考える必要があります。デジタルのもたらす追跡可能、計測可能な情報は、デジタルデバイスのユーザーをただ狙い撃ちして追い回すために使用するのではなく、消費者にとって「役に立つ」という点の新しい目標を明確にすべきであると思います。このような未来は少なからず実現されていくはずです。

デジタルテクノロジーがマーケターにもたらす未来は、単にネガティブな側面ではなく、最終的に消費者とブランドをしっかりと結びつけるものであるに違いないと思うからです。

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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