ECという「インフラ」で顧客や店舗の利便性を上げる
加藤:デジタル化によって以前にも増して顧客のデータを取得できるようになりましたが、これらのデータはどう活用されているのでしょうか。
逸見:ビックデータの前にスモールデータを大事にしています。店舗のPOS情報、ECの受注データ、700万人のキタムラネット会員データ、Tポイントカードの利用者。まずそれらのデータをしっかり見れば、どの層のお客さまがどのような商品を買うのか、仮説を立てることができます。そこができていないのにビックデータを分析しても意味がありません。今年DMPを導入しましたが、これもあくまで仮説をロジカルに証明するためのものです。
加藤:今後の展望をお聞かせください。
逸見:今後はプリント事業を強化していきたいと思っています。今年、全社でよりプリントを楽しんでいただくための仕組み「フォトプラス」を40億円かけて導入し、845店舗改装しました。あわせてネットプリントも手を入れます。店頭には商売感覚に優れ、お客さまのニーズに応えられるスタッフがたくさんいます。ですから、どんなお客さまに何をお勧めすれば喜んでいただけるかはよく分かっている。マーケティングの力で、そういうスタッフの気づきを施策に落とし込み、お客さまを絞り込んで来店を促す、メッセージを適切な頻度で送るなどのサポートをしていきたい。データで証明して支えることで、また新しい気づきが出てくるというサイクルを回していくのが理想ですね。
加藤:デジタルの重要度が高まり、経営戦略や事業戦略と直結し、デジタルの活用の仕方により企業の競合優位性も左右されるようになっています。しかし、だからこそ企業理念や想いといった根本的な部分を現場にまで浸透させることが大事なのだと思います。
逸見:そうですね。当社には会社の方針を示す「事業計画書」があります。全従業員にそれを毎年更新して配布していて、朝礼の時に1日1ページずつ読み合わせしています。店舗・従業員間で考えのズレが生じないように、迷った時はいつでもそれを見て基本に戻れるようにしています。当社にとってECは特別なものではなく、あくまでインフラです。大切なのは理念に向けて、ECや商品や店舗をどう活用すればよいか。店舗とネットが融合することでお客さまが便利になればそれでよいですし、一緒に店も便利になればなおよいです。オムニチャネルありきではなく、企業の理念と顧客を中心に据えることを忘れてはいけないと思います。
加藤:我々も、多くの企業さまのデジタルマーケティングをお手伝いしていますが、やはり顧客体験価値を生み出すのは「テクノロジー」でなく「人」であると感じています。貴社のように、経営の理解が深く、現場とのリレーションを徹底なさっている企業がもっと増えるとよいと思います。
「アイ・エム・ジェイ」に関連する記事はこちら
「オムニチャネル」に関連する記事はこちら
編集協力:アイ・エム・ジェイ