PRは共創、ストーリーテリングの時代へ。PRアワードで知恵をシェアしよう。

日本パブリックリレーションズ協会(以下、PRSJ)では、9月から、今年のPRSJアワードグランプリ(以下、PRアワード)のエントリー募集を開始した。アドタイでは関係者らのインタビューを通じて、PRアワードの全貌を解明する。
今回は、PRSJの理事・冨岡洋子さん(NTTデータスマートソーシング 取締役執行役員)をゲストに、電通パブリックリレーションズの井口理さん(PRSJ アドバイザー)がアワードの狙いや審査のポイントを聞いた。

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PRの専門家じゃなくても、面白いPRの仕事はできる。

広報の人はマインドチェンジする時にきている、と熱く語る冨岡洋子さん(右)と井口理さん(左)

広告換算は、けっこうです

井口理さん、以下、井口:冨岡さんは、PRSJでどのようなお仕事をなさってるんですか?

冨岡洋子さん、以下、冨岡:私がPRSJと接点を持ち始めたのは8年くらい前からです。PRSJが2007年に、PRパーソンの知識やスキルなどを認定する資格として「PRプランナー資格認定制度」を導入したのですが、ラッキーなことに第1回の試験に合格しました。そのご縁で、PRプランナーを盛り上げるためのボランティアチームに入らないかとお誘いいただいたのがきっかけです。今はPRSJの顕彰委員長として、PRアワードはもちろん、日本PR大賞 の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」「シチズン・オブ・ザ・イヤー」の選定・選出に関わっています。

井口:実は日本にも、さまざまな視点のPRの表彰があるんですよね。PRアワードはその代表格というわけですが、ここ数年、どのようなエントリーが増えているのでしょうか。

冨岡:まず感じるのは、PRの手法や幅がすごく広がったということです。背景には、もちろんITやソーシャルメディアの発達がありますが、PRの手法として、メディアを通して発信するほかに、社会に向けてダイレクトに語りかける手法が非常に増えました。これは、ここ数年の大きな変化ですね。PRアワードのエントリーを見ていても感じます。

また、コミュニケーションそのものが、社会的な課題解決に寄与するようになったという事例も、ここ最近、目立つようになってきました。昨年、2001年から15年続くPRアワード史上初めて、2作品がグランプリに選ばれたのですが、両作品ともソーシャル・コミュニケーション部門からの選出でした。これはとても象徴的なことです。

今まではどちらかというと、マーケティング的な課題解決がエントリーの主で、それが発展してコーポレート・ブランドに資するための課題解決が増えました。そして次第に感覚が広がってきて、今では、社会全体の問題解決にコミュニケーションがどう寄与するか、ということにまでなってきました。

井口:世界のアワードを見ていても、社会的な課題をどう解決するか、ということにPRが寄与する例はたくさんありますね。

冨岡:かつては、PRの成果といえば、パブリシティをどれだけ獲得したかを「広告費」に置き換えて考える「広告換算」で語る時代もありました。でも、今はそういうことで評価する時代ではありません。ある課題に対してどれだけアプローチできたか、ソリューションとしてどう機能したか、ということがポイントになると思うのです。

ですから、PRアワードでも、昨年からエントリーシートに「広告換算」は書かなくてけっこうです、ということにしました。そういう意味でいうと、とくに去年のダブル・グランプリは、コミュニケーションそのものが、社会課題の解決手段に直結しており、最近のトレンドを象徴していますね。

井口:日本は「広告換算」がまだまだ横行していて、本当の「成果」を評価する世界の潮流に後れをとっている印象でしたが、そんなことはないんですね。

冨岡:カンヌ国際クリエイティブ・フェスティバル(以下、カンヌライオンズ)でも、ここ2~3年、ソーシャルバリューに対してどう価値転換をもたらすかというのが高く評価されていたと思うのですが、それに少し近づいたのかな、という印象です。

でも誤解がないようにお話ししておきたいのですが、PRアワードは、大きな社会課題に取り組めば高く評価される、というわけではありません。課題の大小が問題なのではなく、PRが課題に対してどう本質的にソリューションを提供したか、ということが大切だと思っています。身近な課題でもかまわないんです。課題の本質的な解決が何なのかということに対してきちんと戦略を練り、それに対して独創的なアイデア、この手があったか、という視点を持ち、そしてきちんと実行する。PRは覚悟をもって「やりきる」ことが、本質だと思います。その結果として、成果が出る。これらがきちんと形になっていることが、PRが課題を解決したという意味になると思います。

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