コカ・コーラのブロガーツアーから考えたこと
そんなことを私が強く感じることになったきっかけは、もう今から5年以上前、上海万博が開催されていた際に、上海で開催されたコカ・コーラさんのインターナショナルブロガーツアーにご招待頂いた時の経験です。
参考:コカ・コーラ上海ツアーで学ぶ、グローバル化における日本の役割と可能性
この企画では、コカ・コーラの上海における先端的な取り組みをアジア各国の人達に知ってもらう機会にしたいと言うことで、日本や中国だけでなく、シンガポールやタイ、オーストラリアなど6カ国20名以上のブロガーを上海に招いていました。
なんと飛行機もホテル代も全てがコカ・コーラ持ち。私自身、ブロガーリレーションを仕事にしている人間だったので、ついこのツアーの責任者であるデジタルコミュニケーションのマネージャーをされていたナタリーさんに「ここまでコストかけてブロガーツアーをやると、マーケティング的に成果を回収するのが難しいんじゃないですか?」と思わず聞いてしまいました。
(コラム冒頭のプレゼンテーションの写真がナタリーさんのプレゼンです)
で、その時の回答で印象的だったのが
「ソーシャルメディア活用は売上への直接的な貢献ではなく、レビューやフィードバックのために実施しているコミュニケーション活動。マーケティングのチームは大きな予算がある分、日々の売上を厳しくみられて活動しているけど、コミュニケーションのチームは中長期の視点で会社として実施するべきコミュニケーションを実施している」
というものでした。
参考:コカ・コーラの取り組みに学ぶ、企業のソーシャルメディア活用の4つの真実
このインターナショナルブロガーツアーのような取り組みは、当然予算もかかるのでマーケティング部署と相談して予算を調整しているそうです。
当然マーケティングのチームは、売上に対する責任をおって大規模なマーケティングキャンペーンを展開していくわけで、予算があることを前提にプランをするのは当然です。
ただ、そうすると広告を使うことを前提にしたプランの方が確実に露出もしますし、安定して成果も出しやすいという判断になりがち。ただ、その分視点も短期的になりがちですし、手法も無難なものになりがちです。
でも一方で、日々のコミュニケーションで様々なことを試行錯誤してトライしていると、そのフィードバックからマーケティングの方で活用できるアイデアやヒントが生まれてくることがありますし、ちょっとした逸話がメディアに出ることで大きく広がることもありえます。
もちろん、苦労してコミュニケーションしたのに全く成果が出ないということも頻繁に起こるわけですが、最初からコミュニケーション活動の可能性を全て否定して、全てを広告脳で考えてしまうのも、またもったいない話と言えるはずです。
私自身、前職にいた際にマーケティングの師匠としてアドバイスを頂いていた岡村勝弘さんに「まずお金を使わずにできることから考えろ」と、ついクリック保証広告とかから手を出しがちな自分に対し厳しく指導をして頂いた経験があります。
でも、予算があるならとりあえずそれで手堅く成果が出る広告手法をやった方が楽じゃないかと思ってしまったりした自分もいたわけです。
一流の広告会社のプランナーの方や、マーケッターの方々は、多分この広告脳とPR脳の二重人格での使い分けができているんだと思いますが。普通の人間だとなかなかにこの相反する面もある広告脳とPR脳という価値観を、自分一人で消化するのは難しい気がしますので。
やっぱり企業においては広告脳とPR脳を人や組織としては一旦分けて、お互いが議論しながら進めていく方が現実的なのかなと感じる今日この頃です。