【前回のコラム】「思いを企画にすることを教わった「先輩コース」」はこちら
プロ野球、クライマックスシリーズが盛り上がる、10月の神宮球場。10月末には、もうひとつの大イベントがあります。東京六大学野球秋季リーグ戦最終週 華の早慶戦・慶早戦です。最後のコラムでは、2年目コピーライターの苦悩と、春の早慶戦ポスター制作とこれからのことを整理します。
自分が一番好きなもので、コピーを書いてみる。
広告について大学で学ばなかった私は、配属直後から挫折しました。大変失礼な話ですが、私は糸井重里さんの名前すら知らなかったのです。広告を知らないというより、教養がないという言葉がぴったりかもしれません。
有名コピーライターの名前が一人も言えない。好きなコピーも特にない。最初から崖っぷちだった私は、なんとか同期に追いつこうと必死でした。
そのなかで私はコピーについて研修で学んだことをノートに書き留めて、その方法で応援部に関するコピーを書いてみる、ということを続けています。
学んだことを実践せずに、自分の頭の中で気持ちよくなっているだけでは、なんの進歩もないと先輩に言われたことがきっかけです。学びを自分のものにするために、自分が一番知っているもの、広告したいものでコピーを書いてみる。そしてそれを友達や先輩、後輩に見てもらう。すると、自分の書いた言葉が本当に人に届くかどうか、痛いほど分かりました。
そのたくさんのストックの中で、「その商品について世の中の人がまだ知らない魅力を端的に伝えること」を応援部で表現したものが、春の早慶戦ポスターでした。
人が集まるものには、必ず魅力がある。
伝統の一戦と呼ばれる慶早戦ですが、伝統をアピールしても人は来ません。しかし、伝統あるイベントには、必ず魅力があります。それを見つけ、言葉にすることが、コピーライターの仕事です。
わたしは、慶早戦の魅力は「初めての人でも楽しめる、応援合戦にある」と考えました。野球に興味がない人を、アマチュア野球に呼ぶことはかなりの苦労です。見に行くならプロ野球、そう考える人が多いのです。「プロ野球にはなくて、慶早戦にある魅力」を探していくことが解決への近道だと考え、今回は応援合戦の「あおり合い」に注目しました。