テレビの次のテレビを、テレビが考えるべき時が来ている。

「放送」は領土を失う一方

最近、講演などでよく使っている図があります。テレビとは、放送だった。でもいまは、スマホなどで番組を配信するようになった。また、放送用に作られた番組が、テレビ受像機でVODを通して見ることもできるようになった。つまり、ぜんぶテレビと言えばテレビ。

テレビ局など放送関係の皆さんには、この図を通じて「だからどんどん番組をネットに配信したほうがいいですよ!見逃し配信も、視聴率に還元されるかでなく、とにかくどんどん出して広告枠を売っていくべきだと思いますよ!」と話をしています。いまテレビ局は、この図の「放送」の部分しかマネタイズできていません。だから、配信についても「放送」のためにやるんだよな、と受けとめがちです。でも、考え方をそろそろ変えたほうがいいです。

もちろん見逃し配信は、リアルタイム視聴につながると思います。視聴率に還元されるのもまちがいない。でも、それよりなにより、上の図の「放送」の面積はとめどなく減っていきます。いまはこの図よりずっと大きく、テレビ受像機のほとんどが「放送」の領土です。でも図と同様、半分くらいまで減るでしょう。もっと減るかもしれない。「放送」は領土を失う一方です。

「放送」に戻るかどうかより、「配信」での存在感を強くするほうがこれからは大事になります。いまはほっとくと、Netflixなんかに奪われる一方。でも例えば見逃し配信をスマホだけでなくテレビ受像機でも視聴できれば、「放送」が減ったとしても「配信」での領土を増やせるかもしれない。

うちの子どもたちがテレビを私から奪うように、ホームエンタテイメントにとってテレビ受像機は最重要拠点です。その中で自分たちの領土を確保することがテレビ局にとって大事であり、放送か配信かはどちらでもいいはずです。

そういう前提に立った時、今度はテレビ受像機の有り様を問うべきかもしれません。

次ページ 「スマートテレビはどうして普及しないのか」へ続く

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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