スマートテレビはどうして普及しないのか
角川アスキー総研の主席研究員・遠藤諭さんは、IT側から見たメディア論を話してくれる方です。私はリスペクトしているので、ことあるごとに講演をお願いしたりモデレーターを依頼したりしています。
先日、私が主催する勉強会「ソーシャルテレビ推進会議」にお招きしてじっくり話していただきました。その時のタイトルは、遠藤さんが打合せでぽろりと口にした「テレビができること、やってないこと」というものでした。
その時の遠藤さんのお話をものすごくはしょってご紹介しましょう。
テクノロジーはいつも、ユーザーのリテラシーとのバランスで普及したりしなかったりします。電子メールは、早い段階で多くのユーザーのリテラシーが技術のやさしさを上回ったので、普及しました。その他の技術も、リテラシーとの関係をグラフにすると、こうなると遠藤さんは言います。これは何か、緻密に計測したデータを元に言っているのではなく、遠藤さんの“目分量“なのですが、実際こんな感じですよね。
では、いまのテレビの最先端はどうでしょう。スマートテレビはどうして普及しないのか、という話なのですが、遠藤さんはこんな図を示しました。
テレビメーカーの皆さんに気をつかって「すいませんイメージです」と謝りつつ、技術が少しずつ難しくなるので、リテラシーが上がっても追いついていない。そんな状況ではないか、と遠藤さんは言います。
だから、テレビは高度化する必要は実はあまりない。これまでユーザーがやっていたことを、テレビでできるようにすれば、それで十分だし普及するのではないか、と遠藤さんは言います。
それは例えば、テレビで番宣やっているのを見たら、直接録画予約ができるようにするとか、だと言うのです。いまは、テレビを見ていて面白そうな番組の予告を見たら録画機を起ち上げて番組を探して予約していますよね。直接予約できたほうが圧倒的に便利です。目新しいことではなく、いまもやっていることを、便利にできるようにする。それが必要ではないか、ということです。
見逃し配信も、いまはスマホやタブレットで見ますよね。でも、テレビ画面のEPGで何を見るか決める時、「このドラマ見ようかな、でも前回見てないんだよね」と思ったら直接の操作で見逃し配信にアクセスできたら便利です。
テレビの次は何なのかな、と考えるのがメディア論だったりします。でも、テレビの次はやっぱりテレビなのではないか。最近、そういう気がしています。ただし、そこでのテレビの構造は大きく変わるでしょう。スマホまで含めた大きな意味でのテレビの生態系を構築する必要があるのだと思います。そしてその時、テレビはどんなハードであるべきかも一緒に考える必要がありそうです。
テレビという新しいシステムを、テレビ局からメーカーまで含めたみなさんで再構築してはどうでしょうか。そんなことを思ってしまう10月です。