異業種企業がつながる、コラボレーションのアイデア
今回から新たに「マーケティング部門から発想するイノベーションのアイデア」というテーマ設定がなされ、各社には事前に「もし、他の会社のマーケターだったらどんなアイデアがあるか」という質問がされていた。これに対する各社の回答を発表していくなかで、ブランドのコラボレーションにつながるアイデアと議論が生まれた。
鶴田氏:私たちは「水から生まれたセントラル」と社内で言うくらい水にこだわっていて、今はプールに塩素をほとんど使っていません。水へのこだわりと「健康」という点でサントリー食品と共通しています。
サントリーさんのサプリメントや飲料の摂取の仕方、飲み方をスポーツジムで提案して、運動と食を一気通貫で健康につなげることができれば良いのではないかと考えています。
私たちは子どもを対象としたスイミングスクールから始まっているので、子どもの運動不足や肥満などをサプリメントでもサポートしたいですし、大人も競技指向の人向けにカロリー摂取のサポートを一緒にできればと思っています。
北川氏:素晴らしい提案で、すべてお応えしたいくらいです。私たちも子ども向けの商品は非常に重視しています。ジョンソン・エンド・ジョンソンも乳幼児向けの商品開発をされていますが、私たちの天然水を生まれて最初に口にする水として提供したい。それくらい安心・安全な水だという思いがあります。
「GREEN DA・KA・RA」や「やさしい麦茶」など、子どもを起用したテレビCMは子どもが飲んでも安心であることの表現でもあります。
現在、同じグループ内でもサプリメントの事業は店舗を持たず、通信販売のみというビジネスモデルで成功しています。そのビジネスモデルが成功しているか否かは、結局はお客様にとってメリットがあるかどうかがすべてのバロメーターであり、清涼飲料においても顧客満足度のアップのために、もっともっとイノベーションを起こさなければと思っています。
鶴田氏:サントリーさんのサプリメントはチラシのクリエイティブも洗練されていますよね。
北川氏:健康・美容関連の用品も「こんな姿にはなりたくない…」という恐怖訴求の表現はしないようにしているんです。
逆に理想的な姿を見せて「そうなりましょう」と提案する形にしています。ミランダ・カーを起用した「黒烏龍茶」のテレビCMなども、こうした考えに基づいて制作されているクリエイティブの一例ですね。
鶴田氏:私たちも競合に対抗し「使用前」、「使用後」のような訴求を検討したこともあったのですが、結果的に「それだけはやめよう」という結論に至っています。
リュウ氏:特保の商品は身体に良さそうだけど、飲んでいるところを見られると、周囲の人から「頑張っているな…」と思われるのではないか、と少し恥ずかしくなることもありますよね。もっとさりげなく飲むことができたらいいな、と思います。
内池氏:私も40代という微妙な年代に入って、「黒烏龍茶」を持っていると「あの人、確かに太ってきたから」とか思われるんじゃないかと気になって、「じゃあ、家に持って帰って」ということになったりします(笑)
北川氏:「伊右衛門 特茶」は、そういったストレスを感じさせないよう、「伊右衛門」と同じようなボトルで「普通の緑茶」をイメージしたデザインにしています。その効果もあって20代〜30代の女性にも非常に良く売れています。
逆に「黒烏龍茶」は発売当初に「これぞメタボ対策!」というようなデザインで、広告もぽっちゃりした人が登場したり、一部で「こうはなりたくない」という訴求をしてしまった。それで、持っていると恥ずかしさを感じる商品になってしまっていた反省がありました。
今は、その方針を転換し、ミランダ・カーを起用したクリエイティブに変えたところ、約130%の売り上げの伸びを記録しています。これは表現のイノベーションに成功した例だと考えています。
自動販売機がコミュニケーションツールになる?
ソフトバンクの内池氏は、各参加企業の課題と自社の課題を組み合わせたコラボレーションを想定し、テレビCMの企画まで考えてプレゼンを展開した。
内池氏:最近は自動販売機の中に通信機器やwi-fiを導入しているものもあります。そこで、サントリー食品さんとタイアップして、位置情報を通して商品情報を提供したり、ポイントを付与したり、wi-fiスポットとして活用するようなIoT化ができればと考えています。
北川氏:今まさにそこに取り組んでいて、ジャパンビバレッジをサントリー食品の傘下に入れました。全国に240万台ある自動販売機はコミュニケーションツールとして活用できれば、我々や消費者ともに大きなメリットを持つツールになる。
内池氏:自動販売機に近づくきっかけになる情報を携帯電話から発信できれば、自動販売機や携帯といった無機質なものと会話するような感覚で面白いかもしれません。
リュウ氏:自動販売機がwi-fiスポットになれば、待ち合わせ場所としても活用できるし、待ち時間にインターネットで情報を集めることもできます。コミュニケーションスペースとしての活用も考えられますね。
内池氏:私たちのミッションには「乗り換え」の促進があります。そこでセントラルスポーツさんと一緒にジムを乗り換えませんかというコミュニケーションも考えました。「Fitbit」という商品に消費カロリーを記録したり、万歩計の機能があります。スマートフォンとフィットビットの契約者に、ジムもセントラルスポーツに変えると割引をするようなことができると面白いかなと。
「Fitbit」はジム以外のところで着けてもらって、ジム外で消費したカロリーをジムで計って、スマートフォンで記録するような使い方も良いかもしれません。
鶴田氏:面白い案だと思います。実は以前、短期間のキャンペーンで消費カロリーに応じた募金ができるという企画があったのですが、クラブ全体でうまく消費カロリーを統一して計測できなかったということがあります。「Fitbit」などでそこをうまく管理できればやってみたいなと思います。
内池氏:私たちのもう一つのミッションは家族の囲い込みです。そこはジョンソン・エンド・ジョンソンの商品は大人から子どもまで家族で使えるものなので、家族でソフトバンクに加入してもらうと、ジョンソン・エンド・ジョンソンの商品を定期的に届けたりするキャンペーンができるのかなと思いました。
リュウ氏:乗り換えの話を聞いて、私たちの商品にも応用できる考え方だなと思っていました。私たちの商品は家族で使えるものが多いので、家族割は良いですね。話題性のあるキャンペーンとして、店頭で「リステリン」がもらえたり、体験できるということも考えられます。
内池氏:どんなものでも使ってみないとわからない面があるので、そういうきっかけになることができると良いですね。最近はIoTも進んできて、あちこちでインターネットが使えるようになってきていますし、乗り換えや家族の囲い込みなど、私たちの課題感と組み合わせていろいろと「こんなものがあったらいいな」ということを考えてみました。
業界の慣例を打ち破るアイデア
今回の研究会では、各社が他社の課題とそれを解決するようなイノベーションを考え、議論したことで、これまで当たり前だと思っていた業界内の慣例に対して疑問を提示されたりすることによる気づきがあった。JAPAN CMO CLUBの加藤氏も「カスタマージャーニーを改めて考えることで、各業界の根本的な課題が見えてくると感じた」と話した。
また、今回の研究会の参加企業は、セントラルスポーツ、サントリー食品、ジョンソン・エンド・ジョンソンといずれも「身体」に関する商品やサービス、ソフトバンクは通信を扱っており、「身体」と「つながる」という言葉をキーワードにさまざまな局面で融合できるのではないかと話した。
IoTを生かし、スマート化された住居「スマートハウス」が健康管理に役立ち、それを家族全員が利用できるような、それぞれが持つドメインを融合してくことで新たなイノベーションを起こし、面白いビジネスにつながっていくのではないかという可能性を感じさせる研究会となった。
JAPAN CMO CLUB
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