デジタルインテリジェンス ニューヨーク代表 榮枝洋文氏
9月27日~10月3日の7日間にわたって開催されたBusiness Creation Lab. 2015 in New Yorkは、デジタルインテリジェンス ニューヨーク代表の榮枝洋文氏によるセミナーで幕を開けました。世界の広告・マーケティング界の最先端を行き、新しい概念や手法が生みだされる場所、アメリカ。セミナーでは、この地で見聞きしたことを参加者がより深く理解し、自分自身の実務に落とし込んでいくために把握しておくべき「勘所」が共有されました。本稿では、そのポイントを5つにまとめて紹介します。
【ポイント1】米国広告業界の地殻変動
異業種の参入と、迎え撃つエージェンシーのデータ戦略
米国広告界は、大きな地殻変動の最中にある。Advertising Age発表の「Agency Report 2014」(図1)を見ると、いわゆる“老舗アドエージェンシー”は6位でBBDOがようやく現れ、以下8位にレオバーネット、12位にピュブリシス、13位にマッキャン、15位にJWT、16位にY&Rなどがランクインしている。
注目すべきは、2・3・5・7・10位。これらはすべて、コンサルティング会社がエージェンシーやデザインファームを買収して設立した企業だ。例えば2位のDeloitte Digitalは、デロイトコンサルティングが2011年に設立したデジタルエージェンシーであり、5位のSapientNitroはITサービス企業だったサピエントが広告会社のニトロを買収して設立したデジタルエージェンシーで、2014年にピュブリシス傘下に入った。
クライアントに提供しているサービスの質に関する議論はここではしないが、売上ベースで言えば、老舗エージェンシーはこうした新興エージェンシーに大きく水をあけられている。
- Epsilon
- Deloitte Digital
- IBM Interactive Experience
- Acxiom Corp
- SapientNitro
- BBDO Worldwide
- Accenture Interactive
- Leo Burnett Worldwide/Arc
- Edelman
- PwC’s Digital Services
- Rapp
- Publicis
- McCann
- DigitasLBi
- JWT
- Y&R
- Experian Marketing Services
- Harte Hanks
- Weber Shandwick
- Merkle
図1「World’s 50 Largest Agency Companies」(Advertising Age発表「Agency Report 2014」より)
コンサル勢のほかにも、1位・4位にはEpsilon、Acxiomといった、データマーケティングに強みを持つエージェンシーが名を連ねる。
広告主側にとっても、「デジタル」「データドリブン」といった環境への対応は急務で、例えばユニリーバは、デジタルへの投資配分を2013年の15%から2015年には20%まで引き上げると発表しており、広告・コミュニケーションにおいて活用する自社独自のチャネルや配信システムの構築を進めつつ、エージェンシーコストを大幅削減する方針にある。
同業他社や広告主のこうした動きに対し、オムニコムやWPP、ピュブリシスをはじめとするエージェンシーホールディングカンパニーは、マーケティングテクノロジー企業の買収、およびデジタル領域の事業拡大を推し進めている。
WPPグループ傘下の最大オペレーション企業は、いまやOgilvy & MatherでもJWTでもGroupMでもなく、Data Investment Managementとなっている(WPPが2013年の決算資料で提示した4つの主要戦略のうちの一つに、「全事業に占めるデータマーケティングサービスの売上の割合を50%以上にする」というのがある)。
また、エージェンシーホールディングカンパニー各社が「エージェンシートレーディングデスク」を相次いで開設したことも見逃せない。オムニコムはAccuen、ピュブリシスはViVAKi、IPGはCadreon、WPPはXAXIS、MDC PartnersはVarick Mediaと、各社がプログラマティック・バイイング・エージェンシーを抱えている。