登壇者はコピーライターの木村敦子氏(17)と竹田芳幸氏(POOL)。ふたりとも過去に協賛企業賞を受賞し、その後TCC新人賞も獲得している。初めて顔を合わせた数年前の宣伝会議賞 授賞式で、お互いに「最大のライバル」と認めあい、その関係が続く両氏。それぞれ異なる戦略を持ち宣伝会議賞に挑んでいたというふたりに、受賞を見据えたコピーの書き方を聞いた。
数を書くカギは、商品特性を複数見つけること
木村氏が初めて協賛企業賞を受賞したコピーは、明治製菓 アーモンドチョコレートの「どっちも主役。どっちも脇役。」。アーモンドとチョコレートを使っているという商品特性から、”アーモンドとチョコレートのどっちがメイン?”という切り口を見つけたことで生まれたコピーだ。
「商品を観察し、特性を複数見つけることで切り口が生まれ、多くのコピーを書けるようになります」と木村氏。「男子会」で登壇した阿部氏と同じく「質は量からしか生まれない。とにかく書くことでしか、良いコピーは得られない」と語りかける。量を書く際の注意点は、視野がせまくなりすぎてターゲットのメリットにならない、独りよがりな切り口を掘りすぎないようにすることだ。
ずるいほどの独自性を見つける
2度目の協賛企業賞は、京阪電気鉄道のコピー「気持ちが、上ル、上ル。」で受賞。「京都といえば京阪」と思ってもらえるためのコピーが欲しいという企業オリエンに対し、「上ル」という京都特有の住所を表す言葉を使い応えた。この表現には、宣伝会議賞の他の受賞者も「この言葉は、ずるい」と舌を巻いたほど。京都は誰もが憧れを持つ魅力のある街という独自性と、そんな京都に連れていってくれる電車であるという商品特性を重ねることで、受賞コピーの切り口が生まれたのだ。
木村氏が関西出身であるということも、このコピーを生みだせた理由だ。お題の京阪電気鉄道は、「おけいはん」と愛称で呼ばれるほど地元では愛されている存在。その事実を知っており、実際に木村氏も利用していたのだ。自分から距離が近い商品であれば、持っている情報が多いうえに、実感を持ってコピーを書くことができるという事例だ。
宣伝会議賞を獲るための5つのポイント
- 1年は10ヶ月だと思え。(本数を決めて、毎日必ず書く。)
- 課題選択に、少しの工夫を。(好物は先に。究極に苦手な物以外は、残さず食べる。)
- 人に見せる。(ズレを修正し、自分で選ぶ力を養う。)
- 協賛企業賞は、狙わない。(狙うは、最終ノミネート以上。)
- 信じる者は、受賞する。(ただし、宣伝会議賞はあくまで通過点。)
木村氏は募集期間の約2ヶ月の間、平日は1日30本以上、休日は100本以上というノルマを作り、コピーを書き続けた。それらをまとめて上司のコピーライターに見せ、方向性の修正を繰り返した。仮にコピーを見てくれる人が身近にいなければ、両親に「このコピーは伝わる?」と聞くだけでも有効とのこと。応募期間中、ゆっくりと過ごす時間はほぼなく、休日もずっと書き続けていたという。「女の子ばかりの場でこんなことを言うとひかれるかもしれないけれど、遊びも飲み会もすべて断って宣伝会議賞だけに時間を使っていました。遊ぶ時間があれば、その時間でコピーが書けるよ、と思っていたんです」と話す木村氏の真剣な表情が印象的だった。