Anomalyが強い、3つの理由
社員数は2013年から18%増の420人、売上は昨対比135%を達成したAnomaly。その強さの理由を、ヴァルカン氏は「3つの柱」として紹介した。
【1】チャネル(広告)ではなくビジネスを扱うこと
あらゆるプロジェクトは、その企業・ブランドが抱える課題や真のニーズを特定するところからスタートする。デザイン、流通、商品そのもの…売れない理由がどこにあるのか、さまざまな角度から分析し、アドで解決することを前提としない。
このアプローチを支えるのが、業界内外の幅広い領域からAnomalyに集まる多様な人材だ。
現在、Anomalyの社員は420人(2013年から18%増)。アカウントマネージャーやビジネスデベロッパー、イノベーションディレクター、エクスペリエンス(体験)デザイナー、メディアプランナー、デジタルアナリストなど、幅広い職種で構成され、元・ファッションデザイナーや元・音楽プロデューサーなど、多様なバックグラウンドを持つ人材が、それぞれの専門性やスキル、個性を発揮して、クライアントの課題解決にあたる。
「クライアント企業出身の社員もいて、クリエイティブアイデアの成否の判断において重要な役割を果たしてくれています」とVulkan氏。
前述のPR活動には、そうした優秀な人材を獲得する目的もある。社員に求めるのは「起業家精神」。自身の専門性を最大限に発揮しながら、互いの専門性をリスペクトし、好奇心を持って学び合おうとする姿勢は、Anomalyのプロジェクトにおいて不可欠だ。自然発生的なコラボレーションが、手法に捉われないソリューション提案を実現している。
【2】企業家的(リスクをとる)な報酬体系の確立
米国のエージェンシーの多くが「(プロジェクトメンバーの)人数×時間」で算出されるフィー制を採用している中、Anomalyは「レベニューシェア」(成果報酬制)をとっている。
「プロジェクトに大勢のスタッフが参加し、多くの時間をかければ良いソリューションが生まれるわけではありません。我々のビジネスに、フィー制はふさわしくないと考えます」とヴァルカン氏。
プロジェクト単位で、両者が納得する金額を設定し、Anomalyはそれに応じた価値を提供する。リスクを共有しながらプロジェクトを進め、事前に設定したKPIを達成した場合、インセンティブが支払われる。
【3】知的財産(IP)ビジネス
「アイデアを出すだけなら、誰でもできる。それを、ビジネスにすることが重要です」とヴァルカン氏。企業家精神によって生み出される知的財産は、Anomayの財産だ。
知的財産の運用を通じて、さまざまなビジネス領域に影響力を持つことができ、また知財ビジネスに関心を持つ企業家的で、スキルの高い人材を引き付けることにもつながる。
アドに依存する、既存のビジネスモデルからの脱却の必要性に気づいているエージェンシーは、日本でも少なくない。
しかし、報酬体系(+クライアントとの関係性)、人材獲得・維持、組織体制の整備と、それを実現するためのリソースの確保や基盤づくりは、一朝一夕で成し遂げられるものではない。
独自の哲学を持ち、クライアントや社内人材を“選ぶ”こと、そして他社が手を付けていない新しい領域に積極的に進出すること。これによって、いち早く“脱・アドエージェンシー”を実現したAnomalyの取り組みに、学ぶところは多い。