ユーザーコンシャスなコンテンツ制作を支援
同氏率いるフェイスブックの社内クリエイティブチーム「Creative Shop (クリエイティブショップ)」は、Faceook上の広告表現がユーザー一人ひとりにマッチしたものとなるよう、広告主の広告制作・運用をサポートすることを目的に活動している。日本法人にも、2014年11月に設置されたことで話題になった。
「Facebookのニュースフィードは、ユーザー毎にカスタマイズされた、きわめてパーソナルな場所。そこに広告を表示した際に、違和感を与えないことが重要です」とダーシー氏。
どんなクリエイティブであれば、高い反応が得られるのか。また、どうやってそれをつくればいいのか。全世界約15億人のユーザーデータを用いた、精度の高いターゲティングや効果測定により、企業がFacebook上で、よりユーザー目線のマーケティング活動を展開できるようサポートしています。
「我々が提供する独自の仕組みをはじめ、テクノロジーを駆使することで、マス広告の時代が長く続いた広告ビジネス100年の歴史に、新たな価値をもたらすことができると考えています」。
Facebookが提供するサービスとして代表的なのが、「Facebook Marketing Partners」だ。広告主企業のマーケターと、マーケティングパートナー企業とをマッチングするサービスで、サポートが必要な業務カテゴリー(アドテクノロジー、メディアバイイング、コミュニティマネジメント、コンテンツマーケティング、スモールビジネス・ソリューション、データプロバイダー、効果測定など)、業種、対応言語などをブラウザ上で選択すると、広告主のニーズに合ったマーケティングパートナーを探すことができる。
また、Facebookを活用したマーケティングスキルの向上を支援するプログラムも、複数提供している。「Blueprint」は、エージェンシーやフェイスブック認定のマーケティングパートナー、また企業のマーケターに向けて、Facebookの効果的な活用法をレクチャーするeラーニング。現在7万人が登録している。
また、同様のレクチャーに加え、マーケティングプランのシミュレーションもできるワークショップ型のプログラム「Blueprint Live」も、現在欧米でテスト運用しており、2016年にはAPAC地区にも展開する予定だという。さらに、Facebookを活用したマーケティングスキルの認定試験「Blueprint Certification」も提供している。
増大する動画ニーズへの対応
フェイスブック社は4月、Facebook上での1日あたりの動画再生回数が40億回(うち75%がモバイル)に達したと発表した。米国のユーザーの8割近くが、動画を視聴するためにFacebookにアクセスしているというデータもあり、Facebookは一大動画プラットフォームとしても急成長を遂げている。
広告主の動画活用ニーズも自ずと高まる中、フェイスブック社は4月、より効果的な動画広告制作・運用をサポートする新たなプログラム「Anthology」をローンチした。
Facebookで配信する動画広告の制作を、Facebookがパートナーとして認定したメディアに依頼できるというもので、10月22日現在のパートナー企業はミレニアル世代をメインターゲットとする「CollegeHumor」や、面白動画に特化した「Funny Or Die」、「Oh My Disney」、グルメ動画サイトの「Tastemade」など、ストーリ性のあるコンテンツ制作に強みを持つ7メディア。
制作には、ダーシー氏率いるクリエイティブショップも密に関わり、「どのタイミングでメッセージを配信する最適なタイミングはいつか」「どんな人が、どんなテーマに関心を持っているか」など、Facebookが持つユーザーデータや行動データを活用し、ターゲティングや配信プランニング、効果測定などの面でサポートする。
さらに、Facebook上の動画関連機能の拡充に向けたテストを進めていることも発表している。例えば、後で見たい動画を保存しておくことができる「Save(動画を保存)」ボタン、友だちやフォローしているFacebookページの投稿のうち動画だけを表示できるニュースフィード「Video」セクション、ユーザーがニュースフィード上の動画をタップして再生すると、その動画と類似したお勧め動画を表示する機能などが挙げられる。
そうした動画コンテンツの視聴デバイスとしては、モバイルの伸長が著しい。Facebookの月間モバイルユーザー数は第1四半期の12.5億人から、第2四半期には13.1億人へと伸び(2015年第2四半期決算発表より)、全広告売上に占めるモバイル広告売上の割合は昨年同期比62%増の76%に伸び、モバイルシフトが加速している。
「Facebookにアクセスするデバイスは、PCからモバイルへと明らかにシフトしています。かつては限定的だったモバイルでの広告表現ですが、テキストから写真・画像、そして動画、AR(Augmented Reality:拡張現実)、VR(Virtual reality:仮想現実)へ……。進化し続けるテクノロジーを活用することで、どんどん美しい表現が可能になってきました。モバイルスペースのクリエイティブは、まだ始まったばかり。モバイルでどんな表現が可能なのか、遊び心を持って、研究・実験する必要があると思っています」とD’Arcy氏。
マーケティング・コミュニケーション活動をビジネスの成果に結びつけるために、必要な対応を次々と、スピーディーに進めていくフェイスブック。米国を代表するテクノロジー企業の姿勢や取り組みの一端を見ることができた。