ここでは『販促会議』11月号で掲載された内容を転載します
利用者のかゆいところに手が届くサービス
寺田倉庫は1950年の創業。食糧庁の指定倉庫となり、米の保管業務を始めた。創業以来、預かる物にとって最適な空間・環境作りと、大手の倉庫会社が苦手としてきたきめ細かい対応を手がけ続けてきたのが同社の特色だ。寺田倉庫 執行役員 月森正憲氏は「単に荷物を預かるだけでなく、利用者にとってかゆいところに手が届くサービスを行ってきました」と話す。
例えば、製造業で使用する部品を扱った際は、海外から輸入された荷物の梱包を解き、国内にある数か所の工場に向けて、必要な部品を必要なタイミングで発送するサービスを行ってきた。
サービス内容だけではなく、事業の範囲も従来からの倉庫業務を基盤にして拡大させてきた。1975年には美術品・貴重品の保管事業を開始。1983年には映像フィルムや音楽メディアなどの保管業務を、1994年にはワインの取り扱いをそれぞれ始めた。
預かった箱を開けて撮影既成概念を取り払う
寺田倉庫が今、力を入れている事業のひとつに、コンシューマー向けサービス「minikura(ミニクラ)」がある。利用者から送られた荷物を、寺田倉庫側で箱を開けて中のアイテムを1点1点撮影し、利用者はウェブ上のマイページで、自分が預けたアイテムを写真とともに管理できるというサービスだ。預けたアイテムは、マイページ上から細かな設定を行うことなく、手軽にヤフオク!を利用して販売することも可能だ(ヤフープレミアム会員登録が必要)。
利用者は30~40代がボリュームゾーンで、男女比はほぼ半々。預けているアイテムでもっとも多いのが洋服で、次いで書籍・コミック、その次はホビー関連やフィギュアなど趣味のアイテムの順となっている。2012年にサービスを開始して以来、保管点数は増え続け、現在では1,000万点以上のアイテムを保管している。
「これまでの個人向け収納サービスは、何を預けているのか忘れてしまったり、預けていること自体を忘れてしまうこともあったと思います。ミニクラではウェブを活用して、そうしたことがないような仕組みを整えました」(月森氏)
個人向け収納サービスを行っている企業はいくつもあるが、顧客から預かった箱を開ける行為というのは、中に入っているものを紛失したり、壊してしまうリスクがあるため敬遠されてきた。
しかし、寺田倉庫は他社が二の足を踏んでいた行為をあえて行うことに決めた。
「やってみたら、それほどリスクは高くなかった」と月森氏は言う。これまで事業者向けサービスで、梱包を解いて品物の検品作業などを行ってきた経験がある寺田倉庫だからできたとも言える。
ミニクラのもうひとつの特徴が、料金体系だ。これまでの個人向け収納サービスでは、重量課金制であり、段ボール代、保管料、倉庫作業費、出庫料、送料などがそれぞれ必要(通常、初回2,000円程度はかかる)で、利用者にとっては、いくらでサービスが利用できるのか分かりにくい課題があった。ミニクラは1箱あたり月額料金250円(写真撮影がないプランは月額200円)という低価格で、しかも分かりやすい価格設定にして、料金面でのハードルをぐっと下げた。
利用促進においても、ユニークなキャンペーンを随時行い、利用に対するハードルを下げている。昨年は、別れた恋人からもらったラブレター、アクセサリー、ふたりが写っている写真など、捨てるに捨てられない“昔の恋人との思い出の品”を預ける「minikuLOVE(ミニクラヴ)元カレBOX・元カノBOX」 を期間限定でリリースした。