機能をAPI化させ他企業とコラボを推進
今、積極的に進めているのが、ミニクラの機能をAPI化させ、他企業に機能を活用してもらいながら進めていくコラボレーション事業だ。
そのひとつが、アニメのDVDなどアニメ関連商品を販売するアニメイトと組んだ「アニメイトコレクション」だ。アニメファンなどの利用者は、自分が買い集めたフィギュアやキャラクターグッズ、書籍などを預けることができる。
「当初はアニメファンの利用者を増やそうと、東京ビッグサイトで開催されているコミックマーケットの会場などで、来場者にチラシを配って認知を広めようとしたのですが、一般消費者にとってミニクラや寺田倉庫はなじみが薄く、思うように認知を広げることができませんでした。そこで、アニメの魅力を伝えている事業者に、ミニクラのサービスを伝えてもらうのが効果的ではないかと考え、APIを活用した事業者とのコラボを進めていくことにしました」(月森氏)API を活用したコラボはほかにも、バンダイのコレクターズ事業部が手掛けるフィギュアレーベル「魂ネイションズ」の保管サービス「魂ガレージ」などがある。
現在、特に力を入れているコラボ先はスタートアップ企業、ベンチャー企業だ。今年2月からはITベンチャーのairClosetとコラボし、ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」をスタートさせた。月額6,800円でプロのスタイリストが選んだファッションアイテムが借り放題というサービスだ。服の保管・クリーニング・物流機能は、ミニクラAPIを活用している。
月森氏は「当社もベンチャー企業も、新しい事業をできるだけ速く拡大させようという気持ちで進めています。お互い気質的に重なる部分が大きいです」と話す。
価値あるサービスの提供が寺田倉庫のDNA
寺田倉庫は1975年からアート作品の保管事業を行っており、長い歴史を持っている。こうしたアートとの関わりを背景に、2014年に「renTarT(レンタルト)」をスタートさせた。アーティストからアート作品を無料で預かる一方、アートファンには気になる作品をレンタルし、気に入ればそのまま購入することもできるようにした。作品を作っても十分な置き場所がない若手のアーティストにとっても、また、気軽に、自分の感性でアートを楽しみたいというアートファンにとっても双方に便利なサービスだ。また10月には、新サービスを開始予定だ。
今年7月には、日本の画材の専門ラボ「PIGMENT(ピグモン)」を本社の隣接地にオープンさせた。日本素材を中心とした良質な画材にこだわり商品をセレクト。顔料だけでも4200色におよぶラインナップが揃っている。画材の研究で博士号を取得した、豊富な専門知識を持つエキスパートが、画材の特性や使用方法などについて丁寧にアドバイスしてくれる。
「単にアート作品を預かるだけはなく、作家を支援したり、会社が位置する天王洲エリアの文化性を豊かにすることなどを目的に、renTarTやPIGMENTをスタートさせました」(月森氏)
また、寺田倉庫はワイン保管業務の歴史も長い。徹底した温湿度管理とセキュリティー体制で、利用者から評価の高いサービスだ。ワイン愛好家は品質を保つため、ワインを移動させたり、振動を与えるのを嫌う。そこで、保管して程よく熟成したワインを友人や知人たちといっしょに楽しめる場として、保管場所のすぐそばにラウンジを作った。
倉庫業界は、どちらかと言えば古い体質で、顧客の“下請け的”な仕事を行うという意識が残っている部分もある。月森氏はこうした古い考えを変えていき、顧客にとって唯一無二の倉庫会社にならないといけないと言う。
「価値あるサービスを提供するのが寺田倉庫のDNAです。日頃、社内で言っているのは、ニッチニーズの山をどんどん作ってその中でナンバーワンになれ、ということです。これからも、従来の倉庫会社のイメージにとらわれることなく、新しいことにどんどんチャレンジしていきたい」と抱負を語っている。
寺田倉庫 DATA
社名:寺田倉庫
本社所在地:東京都品川区
創業:1950年
事業内容:保管保存業、不動産業
代表者:中野善壽(代表取締役 社長執行役員)
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